2025年9月1日月曜日

死と乙女 ロマン・ポランスキー

死と乙女 (岩波文庫 赤N790-1) 文庫 – 2023/8/10
アリエル・ドルフマン (著), 飯島 みどり (翻訳)「あの医者よ。」海辺に立つ一軒家。シューベルトの四重奏曲から逃げ続ける女主人公パウリナが不意の客人の声に探りあてたものとは何だったのか。それぞれの過去を抱えた三人が息詰まる密室劇をおりなす。平和を装う恐怖、真実と責任追及、国家暴力の闇という人類の今日的アポリアを撃つ、チリ発・傑作戯曲の新訳。
 長く続いた南米チリ軍事独裁政権が終焉を迎えたばかりの1990年。チリの劇作家アリエル・ドーフマンは、ひとつの戯曲と向き合い始めます。自身もピノチェト軍事政権に弾圧され、長く亡命生活を送ってきた彼が、その実際の過酷な経験と目にした数々の事実の中で生み出したのが本作「死と乙女」です。
過去の痛みを抱えた3人の男女が密室で繰り広げる心理サスペンスは、発表当時、背景となった「事実」の大きさからもセンセーショナルな注目を浴び、高く評価されました。それぞれの記憶や言動の何が真実なのか、もしくは虚偽なのか、または妄想なのか、まるで「藪の中」を探るようなサスペンスフルな劇展開は、時代や政治体制、国の違いを越えて、私たちを魅了してやみません。
独裁政権が崩壊し、民主政権に移行したばかりのある国では、反政府運動への旧政権の激しい弾圧や人権侵害の罪を暴く査問委員会が発足。 かつて反政府側で戦っていた弁護士ジェラルドは、新大統領から、その中心メンバーに指名されようとしていた。彼の妻ポーリーナもジェラルドと共に学生運動に身を投じていたが、治安警察に受けた過酷な拷問のトラウマに苛まれ、未だに心身共に苦しんでいた。
ある嵐の晩。岬の一軒家では、ポーリーナが家に近づく見知らぬ車の音に怯えながら、様子をうかがっていた。すると見知らぬ車からジェラルドが降りてくる。車の故障で立ち往生していたジェラルドは、偶然通りかかった医師ロベルトの車に助けられ、家まで送られてきたのだ。その後、家に招き入れられたロベルトの声を聞き、ポーリーナは凍りつき、やがて確信する。 この声、この笑い方、この匂い…。この医師こそ、監禁され目隠しをされたポーリーナを執拗に拷問し、美しいシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」の旋律を流しながら、繰り返し凌辱した男だと…。かくしてポーリーナの激しい追及と復讐が始まった。
必死に潔白を訴えるロベルトと、妻の思い込みを疑い翻意させようとするジェラルド。それぞれの心の中にあるのは、狂気なのか真実なのか。

男と女を逆転させて、拷問の過程を再現する奇っ怪な対比が人権のベースの傾きのようなものを実感させる。「藪の中」の話である。最後は自白するようであるが、ポランスキーの自己正当化や懺悔の混沌か?

2025年8月30日土曜日

cloud

cloud 黒澤清 クリーチャーのような話。
クラウドとはいっても生身の人間や社会が取り巻いている。多数の閲覧者から特殊な数人の悪意が膨張し、癒合し、形を成していく。同時に特殊な支援者が現れる。ポランスキーのナインスゲートの天使か。

2025年8月24日日曜日

青春ジャック 止められるか俺たちを2

青春ジャック 止められるか俺たちを2
映画で映画を語る 映画で自分を語る。昔、自分が作った映画製作を再現する。小品ながら細部を丁寧に淡々と作る。東なにがしの支配人がいい感じでした。

2025年8月21日木曜日

『ゴールド・ボーイ』

『ゴールド・ボーイ』は、2024年3月8日公開の日本映画。監督は金子修介、主演は岡田将生。
『バッド・キッズ 隠秘之罪(中国語版)』のタイトルでドラマ化もされた中国の作家・紫金陳(ズー・ジンチェン)の小説『悪童たち』(原題:『坏小孩』。早川書房)を、沖縄県に舞台を移して映画化したクライム・サスペンス。
金子監督の映画では、ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年)、ガメラ2 レギオン襲来(1996年)、ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001年)、あずみ2 Death or Love(2005年)、デスノート(2006年)、デスノート the Last name(2006年)など、いずれもテンポの良いサスペンスを楽しめました。
この映画も面白い。殺人犯の男と3人の子どもたちとの攻防が繰り広げられるサスペンス。子供対大人の知恵比べ。昨年、「バッド・キッズ 隠秘之罪」を見ていましたので、岡田将生があの役をやるのか?と期待していました。舞台を沖縄にしたことも既視感なく、よかった。あの話をコンパクトに2時間に凝縮したことに脱帽します。雰囲気的には後半はデスノート的。
2020年に中国で映像化された「バッド・キッズ 隠秘之罪」は全12回のTVシリーズとして配信されました。同じく紫金陳の小説を原作とした前作「バーニング・アイス -無証之罪-」で主人公の熱血刑事を演じたチン・ハオが、本作では殺人事件の犯人に扮し、「完全犯罪のはずだった」平凡な男が連鎖的に犯罪を繰り返せざるを得なくなっていくさまを、半ばコメディか?と思えるように演じていました。さて、岡田将生はというと、常に冷静で残虐な犯人像を好演、繊細でありながら、しかし、突然感情を爆発させる異常性がはまり役でした。数学コンクール:ゴールド賞対シルバー賞。子供対大人。親ガチャによる格差状況からジャンプしたい、親ガチャ運命を変えたいという思いの戦いに収束していきます。

2025年8月17日日曜日

90歳。何がめでたい

歯に衣着せぬ物言いで人気の直木賞作家・佐藤愛子。
昨年100歳を迎えた彼女のベストセラー・エッセイ集『九十歳。何がめでたい』
『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』を原作に、90歳を迎えた草笛光子が、
エネルギッシュかつチャーミングに等身大の佐藤愛子を熱演し、映画化!
彼女を支える頑固な中年編集者・吉川真也役に唐沢寿明、愛子の娘・響子役に
真矢ミキ、さらに豪華キャストとゲストが多数登場!
映画『老後の資金がありません!』で老若男女の共感を呼んだ前田哲監督がメガホンをとり、
2024年No.1の笑いと共感の痛快エンターテイメントをお届けします!

2025年8月15日金曜日

エイトマン

エイトマンは、鉄腕アトムの対抗馬として制作された和製アニメです。桑田次郎の劇画的な絵と探偵事務所というハードボイルドな設定が大人っぽくて大ヒットしました。桑田次郎は探偵もので定評がありましたので、エイトマンもそのテイストでした。変装の名人の名探偵とサチコと一郎という探偵助手がいるので、明智探偵事務所の設定です。
原作は平井和正と桑田次郎によって少年マガジンに連載されましたSF漫画ですが、アニメ化にあたっては、原作の話が圧倒的に少ないため、名だたるSF作家たちがアニメ脚本を担当していました。即席で作ったストーリーも多かったと思いますが、これが結構面白い。その後のSFストーリーのテーマが網羅されています。
作品の根底には科学が力であるという基本的思想があります。それを手繰るものの善悪が反映される道具に過ぎないということです。それは被爆国日本の訴えだったと思います。日本はイデオロギーが希薄です。平和な日本に入り込む大国、国家権力の非情が執拗に描かれます。大国は個人を犠牲にする、見殺しにします。その中にあって、エイトマンは変身ロボットとして陰ながら日本の平和を守ります。力ある者の倫理観、ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige ):高い社会的地位には義務が伴うことを意味するフランス語 自発的な無私、自負・自尊がテーマです。「これが科学を悪用するものの最後だ」というサラマンダー作戦のフレーズが子供心に刷り込まれています。
東日本大震災を経験した今、見直してみると、エイトマンの機械であるが故の不安定性が執拗に描かれています。制御不能となる状態をいかに回避するか。小型原子炉を動力源とするエイトマンは常に自身の体を制御を続けていかなければなりません。冷却です。タバコ型の冷却剤(TVアニメでは強化剤と呼称)で原子炉の加熱を制御します。水に飛び込むことで冷却します。敵との戦いよりも自身の動力源の安定性が重要なのです。
エイトマン自体がNASAで開発されたロボットですので、米国から存在を隠さなければなりません。ヨーロッパやソ連のエージェントも狙っています。探偵はエイトマンであることを隠さなければなりません。鉄腕アトムや明智小五郎のようには存在を明らかにしていません。秘書のサチコにさえ秘密にしています。当時の米国ドラマ、スーパーマンやバットマン、グリーン・ホーネットのような存在です。たくさんの事件を解決しても探偵は決して祝福されることはありません。
自分の正体を秘書のサチコにまで隠すことは、祝福や名声を求めないノブレス・オブリージュであろうと思います。また逆恨みのような犯罪に巻き込まないための配慮(とはいってもサチコは毎回巻き込まれますが)と思われますが、重症を負った刑事の脳を移植したロボットですので障害を隠すことのようにも感じていました。
しかし、今思うに、ロボットは個別的な人格、パーソナリティがない器です。操作する者によって善にも悪にもなりうる存在です。人工頭脳に移植されるAIによって、どうにでもなる器です。脳が変わっていても見分けがつかない危険性・不信が描かれているのではなかったのかと思います。何体もあるロボットの一つにたまたま刑事の脳の記憶が移植されています。あるいは複製も可能です。入れ替えも可能です。サチコの眼の前の探偵はたまたま記憶が移植された器の一つに過ぎません。何より、エイトマンは誰にでも変身できるのですから、これはアイデンティティに関する根源的問題です。つまり、サチコの眼の前にいる探偵もまたエイトマンが変装した一つの姿に過ぎないのです。エイトマンであることを告白することは自身のアイデンティティ不全の告白に他なりません。
生身の肉体と金属の機械。この印象も最近の機械やAI技術の進化は変えてきています。

2025年8月13日水曜日

父と暮らせば

井上ひさし 黒木和雄 原田芳雄 宮沢りえ
異人たちとの夏みたい。