2022年1月31日月曜日

カーナビの地図更新

現在の車に替えたときにメーカ純正のカーナビにしましたので、すでに数年たちます。当初設定されていた地図データ更新サポート期限も終わり、ときどき現場の道路と異なる場面に出くわすようになりました。東北中央道はひたすら空中を浮遊しつつ、田んぼの中を突っ切っているように表示され、「ルートから外れました。再探索中です…」が繰り返されます。
ディーラーで定期点検の折に地図更新について相談したところ、料金がバカにならないので、スマホ併用で使うのがいいですよとアドバイスされました。商売っ気のない店員だなと思いながらも、さっそくiPadminiにカーナビソフトをインストールしてみました。しかし、セルラータイプでないとGPSが付いていないため運転中の位置情報が使い物にならないことがわかりました。また、常時通信できていないと地図も表示されません。
結局、以下の3つの方法を試してみました。
1.現在使用中のiPhoneを用いることが最も簡便・確実です。ただし、最も小さな旧SEのため表示が小さい難点があります。データ通信量はよくよく小さいようです。
2.simを抜いた古いiPhoneに最新のオフライン地図をダウンロードして使用する。iPhone6にmaps.meというアプリをインストールして使えています。車に置きっぱなしにできるので面倒な手間がありません。
3.純正カーナビ以前に使っていたGARMINのカーナビ nuvi 2462 にOSM (Open Street Map) を読み込んで使用する。当時のGARMIN の GPS ナビはメモリナビであり、メーカの更新サービス終了後も無料の OSM 地図をSDカードに書き込んで使えるという汎用性・融通性があります。動作が不安定ですが、一応表示できました。 
以上、車を替えれば、また振出しに戻る話なんですけどね・・・。

2022年1月30日日曜日

「ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲」

ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲 ; 2019年/日本/113分 · 原案・脚本・監督:才谷遼出演:隆 大介、寺田農、デコウトミリ、慶徳優菜、宝田明。会津から派遣された市職員が、現場で遭遇する、利権に群がる様々なエネルギッシュな集団と大団円のムラの仲間たちの大宴会。ベテラン俳優ときれいなアニメが散りばめられ、タブーをブラックに笑い飛ばした怪映画。これは、すごい・・・。

2022年1月28日金曜日

東京原発

今を時めく役者さんがたくさん出演しています。2時間ドラマ程度の軽いコメディです。当時、原発を扱ってこのようなギャグ映画を撮ったということが、大いなる挑戦だったと思います。ただの発電所、ただの爆弾にしてしまえば、ただのTVの2時間ドラマです。「絶対安全」なんてことはありえないというのが、映画のテーマです。
そろそろ、田原総一郎の「原子力戦争」を見てみたいですね。

2022年1月25日火曜日

第29回日本CT検診学会学術集会

第29回日本CT検診学会学術集会 シンポジウム1
学術集会 シンポジウム1
第1日目、2月25日(金曜)の午前に行います
各演者の発表時間は20分です。 

2022年1月23日日曜日

Chromebook

昨年、2万円ほどのChromebookを買って使ってみました。グーグル専用のつもりで準備しましたが、メールは簡単なものはスマホの音声入力、長いものはPCで書きますので、もっぱら使っているのは枕元でのブログ記事などのメモ書きです。
起動が早いことと、バッテリーの持ちがいいのが大きな利点です。そう考えるとタブレット+キーボードのほうがいいのかもしれませんが、グーグル単機能の入力装置とすると、格安の端末でも、しっかりしたキーボード入力は安定感があります。

2022年1月21日金曜日

太陽の蓋

東日本大地震の原発事故を新聞記者の視点から描いた作品。政府すら東電の隠ぺい体質に弄ばれたということが描かれている。東電にとっては、今までと同じような小さなアクシデントであり、社内でちょちょっと処理できるはずだったという雰囲気がリアルに描かれています。
映画では、何にも終わっていない、処理すべき廃棄物がどんどん増殖していくことが、はっきりと示されており、「何たらヒフティ」のヒーロー感が、いまさらながらに薄っぺらく感じる。「何たらヒフティ」は「早く終わりにしたい」「終わりにしたことにしてほしい」という思いの結集でしょう。そういう意味では加害者側の論理でしょう。「何たらヒフチィ」がアカデミー賞などをとったという事実が、わが国の多くの国民が「終わりにしたことにしてほしい」という側にいるということを明確に示したと思えるでしょう。

2022年1月18日火曜日

ばるぼら

ばるぼら(2019年製作の映画) 
上映日:20201120日 上映時間:100
手塚治虫原作の漫画の実写版。昔の金のない学生映画のような街の風景と「いいとこ住んでるね」と言葉での表現が必要なほど狭そうなマンション。いろいろと思わせぶりではあるが、なんだか才能のないカッコつけただけの芸術家・ひとりよがりの学生映画に見えてしまう。「バンパイア」の間久部緑郎を連想したが、ロックを実写で表現しようとすると、薄っぺらくなってしまうのでしょうね。吹き替えでもいいのでヒロインの魅力を前面に出したビジュアル系映画を見たかった。欲を言えば「クレオパトラ」や「悲しみのベラドンナ」時代の虫プロアニメで見たかったとと思います。

2022年1月17日月曜日

ECR 2022 演題登録

ECR 2022  March 2 - 6, 2022 (online only) AND July 13 - 17, 2022 (onsite + online) 
Imaging diagnosis of common lung nodule: Comparison of ultra-high resolution CT / MRI / PET / pathology - #13297
Inspiratory and expiratory bronchial images by ultra-high resolution CT - #12544
Effect of classical inter-voxel processing on ultra-high resolution CT - #15771
Application of ultra-high resolution CT to the brain - #15836
Reduction of eye lens exposure during temporal bone CT: Clinical usefulness of ultra-high-resolution CT using gantory tilt - #16282
Physical characteristics of Deep Learning Reconstruction newly introduced in ultra-high-resolution CT - #15816
ECR2022の演題登録の締め切りです。July 13 - 17, 2022 (onsite + online) の演題を半年前に登録するので、随分早いですが、コロナの特殊時期ということでしょう。上3演題が自分の発表です。

2022年1月15日土曜日

井上ひさしの日本語相談

井上ひさしの日本語相談 (新潮文庫) 文庫 – 2011/9/28  
へーと感心することばかり。日頃何気なく使っていても、奥の深い背景があったのですね。日本語にまつわる珍問・奇問に平易な語り口でユーモラスに答える日本語解説本。
話し言葉と書き言葉は根本から異なる。言葉は時代とともに変わっていく。日本語は同音異義語が圧倒的に多い。今読んでも、まったく古さを感じさせない普遍的な問題だと思います。
一つ一つの言葉に、歴史的な変遷と周囲からの影響、地理や世代による集団としての変化などの要素が場当たり的に絡んでいます。現在使われている言葉は、その中で生き残った言葉・用法にすぎないのでしょう。
日本語には、漢字の持つイメージやひらがなの持つ柔らかさ、読みの持つ音感などに日本文化の魅力がふんだんに含まれています。ほんとうに言葉を吟味し、大切にする作家だと感心します。
井上/ひさし:1934‐2010。山形県生れ。上智大学文学部卒業。浅草フランス座で文芸部進行係を務めた後、「ひょっこりひょうたん島」の台本を共同執筆する。以後『道元の冒険』(岸田戯曲賞、芸術選奨新人賞)、『手鎖心中』(直木賞)、『吉里吉里人』(読売文学賞、日本SF大賞)、『腹鼓記』、『不忠臣蔵』(吉川英治文学賞)、『シャンハイムーン』(谷崎潤一郎賞)、『東京セブンローズ』(菊池寛賞)、『太鼓たたいて笛ふいて』(毎日芸術賞、鶴屋南北戯曲賞)など戯曲、小説、エッセイ等に幅広く活躍。

2022年1月10日月曜日

UHRCT・気管支・MRI関連発表データまとめ

ECR2022のデータアップロード作成中に引用文献整理をしていてまとめ一覧を作成しました。
RSNA2018
CH169-ED-X:  Whole-Lung Dynamic Respiratory CT: Novel Respiratory Function Examination by Dynamic Wide Volume Scanning Using 320-Row ADCT
CH190-ED-X:  Evaluation of Noise Reduction Techniques in Chest CT
CH260-SD-SUB1:  ECG-Gated Ultra High Resolution CT (UHRCT) in the Lower Lung Field
CH269-SD-MOB1:  Visibility of Intralobular Bronchioles by Ultra-High Resolution CT
 
RSNA2019 Education Exhibits (digital slide show format)
VI Title:  Depiction of Reachable Bronchi of Peripheral Lung Nodule for Transbronchial Approach by Ultra-High Resolution CT (UHRCT)
RSNA2019 Education Exhibits (digital slide show format)
CH Title: The Image Quality and Radiation Dose of Ultra-High-Resolution CT (UHRCT) with Minimum Radiation Dose Setting
 
RSNA 2021 DPS CHEE-21   
Three-dimensional Image of Intralobular Structure by Ultra-high-resolution CT
H. Moriya, MD  
 
Detectability of lung cancer by MRI
ECR 2020 C-06967 Educational Exhibit
H. Moriya1, Y. Kumasaka2, M. Honda3, T. saitou2; 1Fukushima-city/JP, 2Fukushima/JP, 3Isehara city , Kanagawa pref./J 
ECR 2020 / C-06246 Image diagnosis of thoracic vascular diseases
H. Moriya1, Y. Kumasaka2; 1Fukushima-city/JP, 2Fukushima/JP
 
ECR 2020 / C-06038 Basic study of bronchial imaging ability of ultra-high-resolution CT -Bronchial imaging in autopsy image-
H. Moriya1, S. MURAMATSU2, M. Suzuki3, S. Tsukagoshi4, Y. Kumasaka2; 1Fukushima-city/JP, 2FUKUSHIMA/JP, 3Tokyo/JP, 4Tochigi/JP 
 
 
RSNA2020
Black-Blood Lung MRI - Correlations of High-resolution MRI and Ultra-high-resolution CT Images 
H Moriya, MD, Fukushima, Fukushima JAPAN; T Saito; Y Takahashi; S Muramatsu, RT; K Hashimoto; Y Kumasaka; Masahiro Suzuki, Motoharu Hokozaki, Philips NV: Masatoshi Honda, Canon Medical Systems Corporation: Shinsuke Tsukagoshi.
RSNA2020
Bronchial Morphology Measurement Using Ultra-high-resolution CT Images  
H Moriya, MD, Fukushima, Fukushima JAPAN; M Suzuki; S Muramatsu, RT; K Hashimoto; Y Kumasaka; S Tsukagoshi, PhD; Aminco, Inc: Daisuke Suto, Amin Co Ltd: Kingo Shichinohe. 
 
RSNA 2017 Award Winners CH151-ED-TUA6
What CT Findings Besides the TNM Classification or Staging Can Radiologists Provide to Thoracic Surgeons for Safe Lung Cancer Surgery
T. Yamashiro, MD, Nishihara JAPAN
H. Moriya, MD
Y. Nagatani, MD
Y. Oshiro, MD
S. Matsushita, MD
S. Murayama, MD, PhD

福島県医師会 がん対策推進委員会 肺がん部会

福島県医師会 がん対策推進委員会 肺がん部会
 2021/12/27 (月) 17:00 ~ 19:00
当日はあいにくの豪雪でリモートで会議が行われました。
県医師会館の発信元会場には私と事務局が待機し、各医師会の先生方にはリモートで繋いでいただきました。
コロナ禍の影響を受けた2020年は肺がん検診の受診者がおよそ1割減といった状況でしたが、バス検診は大きく影響を受けましたが、施設検診は概ね臨機応変に対応できていたようです。
県内の検診読影に携わっている医師は約300人という結果が報告されました。地域により偏在があり、今後の課題と思います。

2022年1月9日日曜日

呼吸器内視鏡学会 演題登録

本年5月に開催予定の表記学会の演題募集が2回延長されました。
リアル開催が行えなくなって2年立ちます。開催形式を流動的にせざるを得ない事務局の心労は大変だと思います。ハイブリッド開催の場合の予算も高額になると聞いています。開催者としては多くの参加を望むところです。
しかし、発表者にとっては聴衆のいない環境での手応えのなさを物足りなく感じているのではないかと思います。リモート環境になって様々な学会に参加できるようになりましたが、視聴するのは特別講演や教育講演が主体となり、新規性のある一般演題を目にするチャンスが減りました。発表者にとっての聴衆の反応と空気は大変重要な要素だと思います。
ともあれ、呼吸器内視鏡学会の演題募集が苦労しているようですので、超高精細CTの気管支描出ネタで1演題登録しました。

2022年1月4日火曜日

謹賀新年 2022

新年あけましておめでとうございます。
昨年は新型コロナウイルス感染対応と東京オリンピック2020、そして急ピッチに進められたワクチン接種など、攻守入り混じりの対策が医療に求められた年でした。年末には新種オミクロン株が流行し、イタチごっこの様相を呈しています。
日本対がん協会のまとめによると、2020年のがん検診受診者は前年に比べて約3割減っていたとのことです。集団検診の中止や内視鏡検査の延期・受診控えの影響が大きかったようです。結果的にがん診断数1割ほど減少し、今後の進行がんの増加が懸念されています。実は、わたしどもの画像診断センター外来にご紹介いただいている肺癌症例も前年と比して2021進行がん患者が増え印象があります。コロナ禍のような社会的脅威がじわりじわりと個人の健康を蝕んでいることを実感させられています。そのような、福島市医師会で行っている個別検診は先生方の情熱と工夫により継続できました。粛々と日常診療を続けておられる先生方のご努力に改めて敬意を表します。
さて、健診予防センターでは土曜健診・日曜健診など、先生方のご要望にお応えできるようプログラムを組んでおります。各種オプション検査も用意しております。特に、PETがん検診(福島医大との共同事業)、肺がんCT検診(AMED研究事業)、長距離運転手のための脳MRI検診など画像による検診はコロナ禍において、むしろ需要が増えております。今後も「先を行く手法を取り入れてまいりますので、ぜひ大原病院を活用いただければと思います
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
副院長・地域連携室管理者・健診予防センター長・画像診断センター長 森谷浩史

2022年1月3日月曜日

さらば映画の友よ インディアンサマー

『さらば映画の友よ インディアンサマー』(1979年)。
『金融腐蝕列島 呪縛』『突入せよ! あさま山荘事件』などの原田眞人監督の自伝的映画。監督第1作。脚本:原田眞人。
映画ファンの浪人生と映画狂の男(川谷拓三)の青春ストーリーです。あるある的な郷愁が満載の映画です。川谷演じる映画狂の博覧強記ぶりは、原田監督そのものの知識と経験でしょう。多くの映画の仲間たちがちょい役で出演しています。
一目惚れしたマドンナ(浅野温子)に翻弄されながら辿々しくストーリーが進んでいきます。主人公の一時の熱狂と、川谷さんの心底染み付いた愛情との乖離が、やがて悲劇に向かっていきます。「タクシードライバー」や「最も危険な遊戯」が当時の映画ファンへ与えた影響の偉大さを改めて感じます。一人だけ「青春」を止められない・・・「星空のマリオネット」を連想しました。
* インディアンサマー:秋ないし初冬に,晴天が続き,日中は高温,夜間は冷えこむ特異な期間をいう。日本の〈小春日和(こはるびより)〉にほぼ相当する。

2022年1月2日日曜日

映画式まんが家入門

映画式まんが家入門 (アスキー新書)  大塚 英志(著)
大塚英志創作入門シリーズ第3弾。出版社 ‏ : ‎ アスキー・メディアワークス  発売日 ‏ : ‎ 2010/5/7 新書 ‏ : ‎ 256ページ

希望の国

福島の原発災害を地域住民の生活から描いた映画です。 オリバー・ストーン的な報道の使命感を感じる映画です。
想像や誇張・思い込みがあるようにも思いますが、NHKの数々の優れたドキュメンタリーがありますが、このようなドラマでなければ描けない「空気」があります。「あの時の恐怖と混乱」が永遠に映像記録になって残った意義を感じます。
あの時の恐怖と憤りが多くの日本人の中で風化しているのではないでしょうか? 陰気な映画ですが、放射能の恐怖・あの時の空気を最も偏りなく再現できているのではないかと思います。

2022年1月1日土曜日

肺腺癌の発生と進展,わかったこと,わからないこと

第62回日本肺癌学会学術集会 会長企画シンポジウムは野口 雅之会長の肺腺癌の組織発生研究の歴史と将来の展望を基礎研究から臨床研究まで網羅した大変贅沢な企画でした。
1時間半で小型腺癌の概要を窺うことができる好企画です。ひさしぶりに肺癌学会の面白さを体感できました。
 
第62回日本肺癌学会学術集会 会長企画シンポジウム 肺腺癌の発生と進展,わかったこと,わからないこと 2021-11-27 13:20 - 14:50 第1会場 | パシフィコ横浜 ノース 1F G7+G8
[座長] 淺村 尚生(慶應義塾大学医学部外科学(呼吸器)[座長] 楠本 昌彦(国立がん研究センター中央病院放射線診断科)
PSY-1 肺腺癌の組織発生と初期悪性化 [演者] 野口 雅之:筑波大学医学医療系
ゴッドフリー・ハウンズヒールドらがコンピュータ断層撮影(CT)技術を開発して1972年にノーベル・医学生理学賞を受賞したが,その後CT技術は飛躍的に進歩した.特に肺野末梢に発生する肺腺癌の発見,診断には絶大な威力を示している.私自身は1982年に筑波大学を卒業し,国立がんセンターに在籍中,CTを用いて発見される小型の肺腺癌をたくさん診断する機会を得た.もっとも我々病理医はCTの出現の前から,異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia, AAH)という微小な病変が切除肺に時々見つかり,肺腺癌の前癌病変ではないかと考えていた.ただ,AAHが過形成性の病変なのか異形成的な前癌病変なのかの議論の決着はつかずにいた.その後,CT検診などで,AAHと小型肺腺癌をつなぐ上皮内肺腺癌(adenocarcinoma in situ)や微少浸潤性肺腺癌(minimally invasive adenocarcinoma)が見つかる様になって,少なくとも一定の割合の肺腺癌ではAAHからAIS,MIAを経る増悪経路が示された.この悪性化を時間軸で証明した柿沼龍太郎先生の仕事は歴史的な業績だと思う(JTO, 2016).またその間,谷田部恭先生が末梢発生の腺癌の母地がTerminal respiratory unitであることを示し,肺腺癌の組織発生を詳細に研究することが可能になった(Am J Surg Pathol, 2002).私自身も国立がんセンター病理部に在籍していた頃,小型腺癌を多数調べその予後と組織型を検討し小型肺腺癌の組織分類(野口分類)を発表し(Cancer, 1995),その後この分類を基盤に肺腺癌の組織発生機序の解明に取り組んできた.本講演では私たちのグループでの研究内容を中心に肺腺癌の組織発生研究の歴史と将来の展望をお話ししたい.
PSY-2 肺がんと遺伝子,わかったこと,わからないこと [演者] 河野 隆志:国立がん研究センター研究所ゲノム生物
肺がん,特に,肺腺がんはがん遺伝子の変異がドライバーとなり肺がん発生を引き起こし,がん形質の維持にも働いている.そのため,分子標的薬によるドライバー遺伝子機能の抑制は遺伝子によらず有用な治療手段となる.EGFR遺伝子の変異はその代表であるが,エクソン19欠失(15塩基欠失が代表)変異やL858(T→G)変異がなぜアジア人,非喫煙者の肺に生じやすいのか,次世代シークエンスを用いた変異signature解析が進んだ今でも,そのメカニズムは不明である.HLA遺伝子型が腫瘍細胞免疫的排除に個人差をもたらすことでその発生を促している可能性があり,EGFR変異陽性肺がんが免疫チェックポイント阻害治療に不応であることと関連しているのかもしれない.一方EGFR変異陽性の肺腺がんはラテンアメリカにも多発し,ネイティブアメリカンの遺伝的背景が一役を担うようである.ドライバーがん遺伝子変異は上皮内がんより観察されるが,それだけでは臨床がんになるには不十分で,TP53がん抑制遺伝子の失活変異が加わることが必要となる.その他にも数多の遺伝子変化が肺がんでは観察され,それら(の一部)はドライバー遺伝子変異を獲得した初期がん細胞のクローン選択に役立っていると考えられる.これらの遺伝子変化の情報は,周術期や薬物治療における患者の経過予測に役立つと期待される.しかしながら,肺がんの遺伝子変化は患者間で極めて不均一であり,ドライバー変異に肩を並べるようなバイオマーカーを特定するには至っていない.本講演機会を頂き,「肺がんと遺伝子」についてわかったこと,わからないことについて,自分なりに整理してお話ししたい.
PSY-3 早期肺癌に対する外科治療に関するエビデンス [演者] 鈴木 健司:順天堂大学呼吸器外科
およそ半世紀前の1960年,北米の呼吸器外科医であったCahanが肺葉切除を肺癌に対する標準治療として推奨する報告をするまで,安定した結果をもたらす肺癌に対する外科治療は肺全摘術とされた.その後麻酔科領域での分離肺換気法が開発されたこともあり肺葉切除は安全な術式として定着した.1980年代の後半に3cm以下の小型肺がんに対する標準術式として肺実質を温存する縮小切除を標準とすることができないかという命題を検証すべく臨床試験が行われた.今では外科が関わる第三相試験も珍しくないが,その当時としては極めて異例に行われた第三相試験であった.最終的には肺葉切除が予後と局所コントロールの観点から標準とされた.余談ながらその生存曲線は術後3年まではほぼ一致している.この時点で主任研究者のGinsbergが「この結果をもって縮小切除が今後の標準治療となるだろう」と学会で発言しているのが記録として残っている.1995年にこの報告がなされたのとほぼ同時に肺野末梢に存在する肺腺癌におけるin-situ carcinomaを定義する報告がなされた.所謂,Noguchi分類と言われたこの報告をもとに本邦では同じstage IAの肺癌でもその悪性度を治療前にgradingして治療の強度,つまり切除範囲を変更しようとする流れが生まれた.術後に判明する病理診断の基準を切除前にどのように利用するかという議論が1990年代の後半に学術会議において盛んに行われていた.丁度その頃,薄切胸部CTがavailableとなり,画像と病理の対比に関する研究が行われた.JCOG0201ではCT上のすりガラス濃度(GGO)を指標に画像的な非浸潤癌を定義した.その定義に基づき行われた肺葉切除に対する縮小切除の役割を問うJCOGの2つの多施設共同前向き試験の結果が出そろったのが今年である.最新の結果を踏まえて,今後の展開を議論したい.
PSY-4 浸潤巣を意識した肺腺癌の画像診断 Up To Date [演者] 梁川 雅弘:大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座放射線医学教室
CTやArtificial intelligence(AI)技術の進歩に伴い,肺癌の画像診断においても様々な分野で研究やシステム開発が進んできている.しかしながら,本学術集会テーマ「back to basics」が示すように,肺腺癌の画像診断においても,原点に立ち返って考えることは重要である.近年,定量化の時代になりつつあるが,病理組織像とCT画像の対比は,放射線科領域の研究の基礎でもあり,忘れてはならない手法のひとつでもある.本シンポジウムでは,最初に,薄層CT画像の充実成分径と病理学的浸潤径をダイレクトに対比検討した多施設共同研究の結果を再度お伝えし,浸潤巣を意識したCT分類について言及したい.次いで,ここ約20年間でCTの空間分解能に著しい進化をもたらした超高精細CTについて簡単に紹介し,最大空間分解能0.15mmを用いた肺腺癌の微細な形態学的所見と病理学的浸潤巣の関係を検討した結果についても紹介する.超高精細CTを用いることで,CT充実成分径0.8cm以上および細気管支透亮像の途絶所見が,肺腺癌の病理学的浸潤成分を予測する上で重要な因子であることが判明した.超高精細CTの空間分解能向上は,形態評価のみならず定量評価にも今後大きな影響を与える可能性を秘めている.そして,最後に,トレンドであるAI技術を用いた肺腺癌の診断能とAI技術が放射線科医の診断能に与える影響についても簡単に触れておきたい.本シンポジウムが,肺癌の画像診断に関する知識の整理や明日からの臨床・研究面において一助となれば幸いである.