2015年7月25日土曜日

診断参考レベルについて

 近年、医療分野における放射線の利用が急速に拡大し、これにともなって医療で受ける放射線被ばくによる影響への不安も広がっています。これに対して国際機関や団体が協力して、エビデンスベースの医療放射線防護の実現に向けた検討を行っています。こうした活動の母体として2010年、関連する学協会の協力のもとに、医療被ばく研究情報ネットワーク(Japan Network for Research and Informationon Medical Exposures: J-RIME)が発足しました。J-RIMEの活動目的は、放射線診療における被ばく線量・リスク評価など医療被ばくに関するデータを収集し、我が国の医療被ばくの実態把握を行うとともに、国際的な動向を踏まえて医療被ばくの適切な防護体制を国内に構築する点にあります。
 その対策の一つが、防護の最適化のための診断参考レベル(Diagnostic Reference Level; DRL)の策定です。わが国においては、2015年6月、初めての診断参考レベルが策定されました。

 診断参考レベルは線量限度ではありません。職業被曝の線量限度とは異なり、DRLは個々の患者の被ばくを制限するものではありません。したがって、臨床的な必要性があれば超過してもよく、また、優れた診療と劣った診療の境界でもありません。被ばくを低減しすぎて必要とされる診断情報が得られなければ、かえって無駄な被ばくとなります。したがって、DRLの目的は、診断のための最適化であって、線量低減ではないのです。
 DRLは、異常に高い線量を用いている施設を特定し最適化のプロセスを推進するためのツールです。現場の医療機関における診断参考レベルの活用法としては、施設で用いている典型的な線量を集計し、DRLと比較することで撮影条件の見直しのきっかけとすることです。DRLを超えている場合、臨床的に正当な理由がない限り、線量が最適化されているかどうかを判定するための見直しを行う必要があります。
 したがって、線量最適化の第一歩は自施設の線量を確認することです。
 大原綜合病院・大原医療センターの現在のCT撮影条件は概ねDRLを下回っていました。特に、医療センターの被ばく低減技術(AIDR3D)を用いた撮影ではDRLを大きく下回っていました。

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