事故直後に、事故の起きた原発立地県の県民を切り捨てる判断を民主党閣僚と官僚とで行っていたかもしれないということでしょうか。 議事録がないのも当然と言えば、当然。
東京電力福島第1原発事故5日目の昨年3月15日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測に
ついて、当時の高木義明文部科学相ら政務三役や文科省幹部が協議し、「一般には公表できない内容と判断」と記した内部文書が作成されていたことが2日、同
省関係者への取材で分かった。
文科省は「事務方が作ったメモだが不正確。公表の具体的な判断はしなかった」と内容を一部否定している。
事故直後のSPEEDIの試算公表をめぐる文科省の議事録などは公表されていなかった。予測は原子炉内の全ての放射性物質の放出を想定し、文書には「関
東、東北地方に放射性雲が流れるとの結果が出た」と広範囲な流出も記載、文科省が最悪の事態を想定し計算を繰り返していたことが明らかになった。
文書は昨年3月19日付。政務三役らが出席した15日の会議で、試算結果を三役が見て「一般にはとても公表できない内容であると判断」と明記され、より標
準的なデータを用意することになったとしている。当時副大臣だった鈴木寛参院議員は「全量放出との前提は現実にはありえず、パニックを呼ぶ恐れもあった」
と説明した。
2012.3.3 14:45 産経ニュース
去年3月の原発事故で、放射性物質の広がりを予測するシステム「SPEEDI」が住民の避難にいかされな
かったことについて、菅前総理大臣ら、事故の対応を中心となって行った政治家たちが「所管する文部科学省などから説明を受けず、事故から数日たってもその
存在すら知らなかった」と民間の事故調査委員会に対して証言していることが分かりました。
原子力事故が起きた際に放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」は、開発・運用に120億円の費用が投じられながら、去年3月の原発事故で住民の避難に生かされず、政府の対応に批判が出ています。
これについて、28日に公表される民間事故調の報告書の中で、事故対応を中心になって行った菅前総理大臣ら5人の政治家が「所管する文部科学省などから説明がなく、事故から数日たってもその存在すら知らなかった」と証言していることが分かりました。
調
査の対象となった5人のうち、当時の枝野官房長官と福山官房副長官は、2号機から大量の放射性物質が放出された去年3月15日ごろ、マスコミからの指摘で
初めてSPEEDIの存在を知ったと話しているほか、当時の海江田経済産業大臣は「存在すら知らなかったので、データを早く持ってこいと言うことができな
かった。本当にじくじたる思いだ」と述べたということです。
SPEEDIの説明がなかったことについて枝野前官房長官は「予測の計算に必要な放射性物質の放出に関する数値が得られなかったためデータの信頼性が低く、説明の必要はないと判断した」と文部科学省から報告を受けたと話しています。
これについて民間事故調は、28日公表する報告書で「SPEEDIは原発を立地する際、住民の安心を買うための『見せ玉』にすぎなかった」と厳しく批判したうえで「住民の被ばくの可能性を低減するため、最大限活用する姿勢が必要だった」と指摘しています。
ま
た、災害時の情報発信に詳しい東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授は「原子力災害が起きている最中に指揮官である官邸の政治家が存在さえ知らないというのは通
常は考えられない。 SPEEDIの存在を政治家に報告しなかった官僚も問題だが、官邸にも危機管理能力がなかったと言わざるをえない」と話しています。 2月28日
6時38分 NHKニュース
民間事故調は、放射性物質の飛散が増えた昨年3月15日を、住民避難の観点から「運命の日だった」と指摘した。報告書は放射性物質の拡散予測シス
テム(SPEEDI)に関し「(避難の)判断材料とするため30年にわたり開発してきたのではなかったのか」と問い掛け、予測を避難に活用できなかった国
の失態を批判した。
報告書はSPEEDIについて「原発立地を維持し、住民の安心を買うための『見せ玉』にすぎなかった」とも表現。一方で、予測に不確実さがあるものの「避難住民の被曝(ひばく)の可能性を低減させるため、最大限に活用する姿勢が必要だった」とした。
また文部科学省が第1原発事故後に、SPEEDIの運用を原子力安全委員会に「一方的に移管した」と指摘。「責任回避を念頭においた組織防衛的な兆候が散見され、公表の遅れを招く一因になった」と文科省の無責任ぶりを非難した。
2012.2.28 00:27 産経ニュース
東京電力福島第1原発事故に関する国会の事故調査委員会(委員長、黒川清・元日本学術会議会長)は
15日、東京都内で第4回委員会を開いた。会合には原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長が出
席。班目氏はSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)に関し、「計算には1時間必要で、風向きが変わる場合がある。SPEEDIが生きていたら
うまく避難できていたというのが誤解だ」と述べ、住民避難に生かすのは困難だったとの見解を示した。また、原発に関する国の安全指針について「瑕疵(か
し)があった」と陳謝した。
政府のマニュアルでは事故の場合、保安院が緊急時対策支援システム(ERSS)を起動して放射性物質の放出源情報を把握。SPEEDIで放射性物
質がどこに拡散するか予測することになっている。しかし、今回の事故では、地震による原発の外部電源喪失により、ERSSからのデータ送付ができなくなっ
て拡散予測はできず、避難区域設定への活用もできなかった。
班目氏は「SPEEDIの予測結果に頼った避難計画にしていること自体が問題で、直ちに避難するようなルールにしておくべきだった」と述べた。
安全委によると、仮にERSSからデータが届いていたとしても、今回の事故では水素爆発や炉心溶融などシステムの想定外の出来事が起きていたため、正確な計算ができず間違った予測結果になっていたという。
また、班目氏はこれまでの国の安全指針について「津波について十分な記載がなく、長時間の全交流電源喪失も『考えなくてよい』とするなど明らかに
不十分な点があった。おわび申し上げる」と謝罪。その要因について「諸外国では検討しているのに、我が国ではそこまでやらなくてもいいという言い訳ばかり
に時間をかけ、意思決定がしにくい状況にあったことが問題の根底にある」と指摘した。
一方、寺坂氏は事故に関する政府の議事録が作られていなかった問題について、「事故当初に対応できていなかったのは申し訳ない。公文書管理法上も問題がある」と陳謝した。【岡田英、比嘉洋】 毎日新聞 2012年2月16日 東京朝刊
福島第1原発の事故に関し原発事故調が26日にまとめた中間報告では、放射性物質の拡散予測システム「SPEEDI」が有効活用されなかったとする指摘がされた。また、放射能の影響に関して政府が当初記者会見で「直ちに影響なし」といった表現を多用したことについても、「説明をあいまいにしている」と批判した。
放射能の影響を避けるために政府が適切な情報活用をしなかったばかりか、かろうじて発信した情報も適切でなかったことになる。
SPEEDIの活用について報告書は、「活用されれば少なくとも、避難方向の判断に有効だった」と指摘。避難指示も「市町村への電話がつながるまで時間を要し、避難指示を自治体が知ったのは、ほとんど報道によってだった」などと言及した。
政府の対策に翻弄され続ける福島県の被災者からは憤りの声が上がった。
全域が「計画的避難区域」に指定されている飯舘村の酪農業の男性(58)は「原発事故後、正確な情報がなかったため、村にとどまった住民が多かった。迅速
にSPEEDIのデータが公表されていれば、避難するなどして被曝量を減らせたはず」と話す。男性は「放射線の知識もないわれわれが、自分たちで避難につ
いて判断しなければならなかった苦しみを国は分かってほしい」と訴えた。
飯舘村の会社員で、現在は福島市内で避難生活を送る高橋幸一さん(50)も「SPEEDIの開発費は100億円以上。それだけお金をかけた以上、有効に使ってほしかった」と残念がる。
また、報告書は政府が多用した「直ちに影響なし」との表現についても言及した。枝野幸男官房長官(当時)は3月16日午後6時ごろの記者会見で、福島県飯
舘村などで毎時30マイクロシーベルト以上の放射線量が観測されたことについて「屋外活動をしても、直ちに人体に影響を及ぼす数値ではない」と説明。
蓮舫消費者行政担当相(当時)も同20日、消費者庁のホームページで「基準値を超えた食品を一時的に摂取したとしても、直ちに健康に影響を及ぼすとは考えられない」とのメッセージを記載。
事故調は、閣僚のこうした表現について、心配する必要がないのか長期的には影響があるのか「分かりにくい」と指摘。「真実を迅速・正確に伝えていないとの疑いを生じさせかねない」と結論付けた。 2011.12.26 21:29 産経ニュース