男優 原田芳雄の逝去からずいぶん経ってしまった。強烈な印象が残っているのが「祭りの準備」である。あの、地元土佐のチンピラのキャラクターが、地のままなのか演技なのか解らないほどの混然とした雰囲気が、凄いの一言に尽きる。「竜馬暗殺」でも、ギラギラした狂犬のような目つきで、無為に時間が経過してゆくフラフラ感がよかった。そういえば「天皇の世紀」というTVドラマの中で、勤王の志士の一人を演じ、黒船まで小舟を漕いで行くシーンを実際にやってみようという撮影現場シーンがあって、インパクトがあったことを思いだした。実際に演じてみたときの役者の生の声を伝えるという、ドラマとドキュメンタリーの混在したスタイルが斬新であり、記憶に残っていたのだ。
あの頃の「天皇の世紀」を見る手立てがあるかとネットで検索していたら、youtubeで、ほぼ全作品を見ることができた。原田芳雄は吉田松陰、田村正和が橋本佐内を演じており、彼らを「野火」と称する大佛次郎の視線は勤王の志士に対して一貫して暖かい。
ドラマ版の中で、伊丹十三が岩倉具視を演じており、異様な存在感を残している。後半のドキュメンタリー版では伊丹氏はキャスターを務めており、filmmakerとしての意気込みが感じられる。仙台に上陸する世良修蔵のくだりはドラマとドキュメンタリーとの衝突ともいうべき名シーンではないかと思う。戊辰戦争が過去の歴史ではないと実感させられる。
その後、伊丹氏が気になって、氏のエッセイ集を一気読みした。面白い。どうでもいいようなことを詳細に記述し、最後に腑に落とさせる構成は巧みである。
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