風刺と博物学的な精密な記述。異形の生物は、不気味な中にも滑稽さがあり、別世界への興味を掻き立てる。
ブリューゲルは16世紀中葉に初期ネーデルラントのブラバント地方を中心に活躍した。子のピーテル2世や一族によって継代、模作を含めた多くの作品が作られた。
アルチンボルトやルーベンスとの類似性、昆虫図鑑や植物図鑑のような細密画、地上の楽園などは、さながらサファリパーク動物園のようである。
人物の描き方は滑稽に誇張され、特徴的である。ネーデルラントの民族性や土着の文化に根差した絵画を残した。『七つの徳目』、『七つの大罪』などの寓意画や民衆の生活をベースに「道徳」「背徳」を描いた。昨年、日本公開された「バベルの塔」は特に有名。
踊りや祝祭、遊びなど、農民たちの様子が描けれるのだが、肥満や痩せ、長身や小柄など、誇張して描かれており、子供の表情も決して無垢とはいえない。滑稽な中に不気味さがある。
阿部謹也氏の「ハーメルンの笛吹き男」の表紙絵がブリューゲルかと調べてみたら「シント・ヨーリスの縁日」という作品の一部が使われているとのこと。笛吹き男伝説は13世紀ごろのドイツの話なのでブリューゲルとは時代が異なるが、踊りながら連れ去っていく不気味なイメージが重なる。
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