2022年8月21日日曜日

オフィサー・アンド・スパイ

 ロマンポランスキー監督の最新作。ドレフュス事件を扱った映画です。現代のjaccusedを検索すると私は告白するという昔の映画がありました。メル・ファーラーが出演した同一題材の映画です。今回のポランスキー版との違いも興味深いところです。
折られたサーベルがタイトルバックとエンドクレジットに使われています。誇りや尊厳を意図的に打ち砕かれたという象徴でしょう。
悪魔島に幽閉されたドレフュス大佐の冤罪を証明してゆくストーリーです。その過程で軍部の上層部の怠慢さと偏見が明らかになっていきます。悪魔島というと小学生の時に、NHKの連続ドラマでやっていたタイムトンネルのエピソードが有りました。悪魔島にタイムスリップしたダグとトニーがドレフュス大佐に冤罪が証明されてフランスに戻れますよと伝えるシーンがありました。その他、パピヨンでも、脱走を繰り返すパピヨンが最後に投獄されるのが悪魔島でした。
今回のドレフュスは理不尽な判決にも、いかに拘束されようと冷静に自分の正当性を訴えながらも、運命を受け入れ、生存します。今回のドレフュスは宇宙大作戦のミスタースポックのようです。冒頭、主人公の教官に自分はユダヤ人なので不当に成績が低く評価されているのではないかとクレームをつけます。教官はそうならないように注意していると答えると、すでに、その時点で評価が歪められていると返します。ラストで面会に来るドレフュスを迎える主人公は当然感謝や喜びの会話を期待していますが、彼は自分と教官との処遇の違いを訴えます。悪魔島に幽閉されていても全く変わっていません。ユーモラスなシーンですが、まさにキャプテンカークとミスター・スポックのやり取りのようです。
人種の差や個性の違いなど多様性の時代です。このような個別性を一民族の固定化した色眼鏡で判断することは不可能でしょう。

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