2022年8月30日火曜日

多施設共同研究のエビデンス

30年ほど前、日本医大の肺がん内科グループの先生方の化学療法の共同研究に加えて頂いていたことがありました。放射線科の医師が一施設で肺がん診療を続けていても、まったくデータとして蓄積されない。エビデンスにつながって行かないもどかしさを感じていたのです。
多施設共同研究の全体会議は活気にあふれ、議論が前向きでとても感化されたことを覚えています。多くの施設の中で、論文化の権利や発表の権利を公平に決めていきます。このような人材の中から次の世代のリーダーたちがたくさん生まれてきました。 
緻密なプロトコール作成、適応条件と除外条件の設定。統計学的な目標症例の設定と倫理への配慮など多くの学びがありました。
そんな内科系の知識の先端をまざまざと見せてもらったのが、北大第一内科の(故)山崎浩一先生でした。自分は仮想内視鏡を研究していましたが、技術的なレポートしか書いていませんでした。仮想内視鏡のようなテクニックをテーマに、がん化学療法のような前向き臨床試験ができるとは思っていませんでした。ところが、彼は仮想気管支鏡を用いた前向き臨床研究計画を練り上げたのです。非常に冷静で、かつ論理的でした。精力的に症例を集め、そのマルチセンタースタディは「NINJA-STUDY」として論文化されました。
放射線科の領域でも山崎先生のような計画をたてればエビデンスを生み出せるのではないか?と、目の前に見せつけられた思いで、本当に驚きました。放射線科の診断領域では複数のテクニックを評価する際には今でも後ろ向きの読影実験が主体です。
ちょうど仙台厚生病院で320列CTを使い始めていた時期に、当時、神戸大におられた大野良治先生に放射線科領域の多施設共同研究のしかたについて相談したことがありました。彼は当時からたくさんの研究を行い、多くの論文を書いていました。大野先生から教えられたのは撮影プロトコールを決めるということでした。プロトコールを決めておけば、いつの間にか症例が集まる。施設間の比較でもプロトコール間の比較でも、統一さえしていれば自然と症例が集まるというアドバイスでした。このことは、臨床的には実は当たり前のことでした。むしろプロトコールを決めずに臨床撮影を行っていること自体が画質の不安定につながる悪要因になりますので、とてもよいアドバイスでした。

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