2024年5月31日金曜日

中尾彬さん追悼『内海の輪』

中尾彬さんの訃報を聞き、昔の映画を見てみました。中尾さんを初めて意識して見たのは、NHKの連続時代劇「男は度胸」です。柴田錬三郎の元禄なんたらという原作をドラマ化したスタジオ時代劇です。1年ほどの放送で、前半が忠臣蔵騒動、後半が天一坊事件を描いています。中尾さんは前半の堀部安兵衛を演じていました。「内海の輪」は、斎藤耕一監督の作品で、不倫関係の男女が瀬戸内の観光名所を巡る数日間を描いています。女が邪魔になった男、男にベッタリと纏わりつく女、それぞれの心情の揺れが描かれます。日活ロマンポルノにでもなりそうな内容ですが、一般映画だったようです。TVの2時間もののような陳腐な題材ですが、バックに過剰な音楽が流れません。背景に適当な音響を流して、安易に場面を説明しようとする昨今のTVドラマとは全く違った新鮮さがありました。「約束」や「津軽じょんがら節」につながる映画です。若い背広の男性に寄り添ってついて行く和服の女性、汽車やタクシー、船など、当時の様子が描かれています。
以下、Wikipediaより。
『内海の輪』(ないかいのわ)は、松本清張の小説。「黒の様式」第6話として『週刊朝日』に連載され(1968年2月16日号 - 10月25日号)、1969年5月に中編集『内海の輪』収録の表題作として、光文社(カッパ・ノベルス)から刊行された。連載時のタイトルは「霧笛の町」。1971年に松竹で映画化、また1982年・2001年にテレビドラマ化されている。
岩下志麻(西田美奈子) 中尾彬(江村宗三) 三國連太郎(西田慶太郎)
監督:斎藤耕一 脚本:山田信夫宮内婦貴子
淀川長治「この監督は映画の面白さをよくわきまえていて四国、新潟、水上、兵庫の蓬莱峡と美景がきれいな撮影で目を楽しませる。岩下志麻はもはやカトリーヌ・ドヌーブ級のうまさ。問題は青年のエゴと弱さをさらけだす宗三役の中尾彬。これが弱さのかげをもっと深く見せねばならなかった。難役ゆえに惜しい。」。
高澤瑛一「ミステリーというより岩下志麻が演じるヒロインの心理の奇怪さを描き出す作品になった。カメラで現実の不可解さを写しとる。その創作方法は斎藤監督がゴダールに共感していたことからも自明だ」

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