四次元時計は狂わない-21世紀 文明の逆説-
単行本(文春新書) –
2014/10/20 立花 隆 (著) 800円
東日本大震災以後の日本を再生させるものは何か――。最先端科学から宗教、歴史に至るまで、現代最高の知性が思索しつづけた軌跡。主に科学分野の最新トピックを取り上げたエッセイ。専門の科学・医学の先端的情報を分かり易く、また、期待をこめて紹介しています。以下、気になった文言です。
どうでもいい情報は捨てるにかぎる。情報系は流れる情報のSN比を高めれば高めるほどシグナルの明晰性が高まる。若い時からプロスポーツ界と芸能界の出来事には完全無関心だった。
子供時代の体験は何でも毎日面白い。
ポストトラウマティックグロウス。戦後、わけのわからない理不尽な苦難体験から人生が始まった。
「みんな一緒」の世界は弱さを内包する。画一化の方向性は共倒れの方向性でもある。
レーザー技術発展の極限形として、X線自由電子レーザーが開発中である。波長の短さが原子の大きさなのだ。いままで捉えられなかった化学反応の世界のような現象を動的にとらえることができる。このため、創薬の分野で大革命が起きると予測されている。X線自由電子レーザーは見るもの全てが新発見の連続になる。科学はすべて見ることから始まる。
日本でいま、四次元時計が作られている。百億年前のビッグバンから動かしたとしても、1秒しか狂わない。この時計の構造は、高精度レーザーで格子を作り、そのレーザーの波の谷間にストロンチウム原子を乗せるものである。時計が正確になると時空の歪みを計測できる。地下資源を探査できる。プレートの移動がわかる。
上野の国立科学博物館。時計の歴史。和時計の歴史。日本は不定時法の国。夜明けを開け六つと言う。日暮れを暮れ六つという。昼と夜をそれぞれ6つに区分して刻として、十二支の名をつけた。午のときが昼の12時ごろ。正午・午前・午後の語源。1刻は4等分されて1つ2つ3つと数えた。
江戸時代のエンジニア田中久重、からくり儀右衛門。万年時計は時計の最高傑作。田中は明治以降、電気通信分野に進出。後に東芝となった。
がんは今や不治の病と言うより病院に通いながら長期にわたって付き合い続ける慢性病の一緒になりつつある。
人間の脳は10テラバイトの記憶容量。それはシナプスのスパイン部に蓄えられている。毎日その1%が書き変わっていく。
デビットクローネンバーグ。危険なメソッド。フロイトとユング。
現状維持が続く限りにおいて戦争は絶対に起こらない。戦争が起こるのは現状が変更される時。
図書館が中心になって読書の電子化・知の体系化を進めていく。既存の紙の書籍も、電子書籍として入れるようにする。読書の電子化の最大の目標の1つに学生への読むべき本の推薦を組織的かつ各個人向けに行うことができる。デジタルキュレーション。
本というのは不思議なもので読めば読むほど、もっと読みたくなる。
読めば読むほど知識が乏しいように思える。
現代社会がすべてプラグマティズム。理屈より実践的行動で動いている。結果よければ全てよし。事故原因をあくまで追求してその特定の原因を立つことに熱中するのではなく、ありとあらゆる事故を想定してその全てに対して安全防止対策を施す。
人間の持つ感覚器官で最も入力情報量の大きいのが視覚の眼、次いで多いのは指先の触覚で、どちらも百万本単位の神経の束が情報を運んでいる。
ハンナアーレント。アイヒマンは平凡極まりない人物。あれほど残虐な罪を犯せたのは、彼が何も考えなかったからだ。無思考が最大の特性。現代社会に巣食う巨大悪の出現の謎を追求した論文。
Steven Spielbergシンドラーのリストなどといった利益をつぎ込んで財団を作り、アイヒマン裁判の全記録を買い取り無償で完全公開している。
スマートフォンはスーパーコンピューター(80年代のクレイレベル) 20台分の演算能力。自動運転車のコンピューターはそのスマートフォン20台分の演算能力を持っている。
日本列島を走行する日産自動運転リーフが時々刻々動き回る光の点で表示される。バーズアイビューあるいはゴッドアイビューで世界を見ているような気分にさせられた。
経済原則を無視してあくまで品質にこだわる人々がどこの世界にもいるのは日本文化の特質なのだ。
私は実はそれほど倫理における厳格主義者ではない。絶対の真実などわかりっこないと思っているから、ほどほどの真実を掴めれば良いと思っている。
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