『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(The Imitation Game)は、伝記『Alan Turing: The
Enigma』を基に2014年に製作された、ベネディクト・カンバーバッチ主演の英国映画。第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞(キーラ・ナイトレイ)を含めた8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞。第72回ゴールデングローブ賞で5部門、第21回全米映画俳優組合賞で3部門、第68回英国アカデミー賞で9部門にノミネート、またチューリングの功績を広く知らしめたことでLGBT権利の推進団体ヒューマン・ライツ・キャンペーンに製作関係者が表彰されたとのことです。
映画は、第二次世界大戦中にドイツ軍のエニグマ暗号の解読に取り組んだイギリスの暗号解読者アラン・チューリングの人物像を描いています。
人にはいろいろな才能があります。主人公のチューリングは数学が得意な子ですが、学生時代はいじめの対象とされていました。同じく数学好きの友人クリストファーだけが彼の秘めた可能性を認めていました。そんな数学オタクがエニグマ解読のチームに加わり、膨大な統計学的な総当たり計算を半日で行うという任務に当たります。しかし、自分本位で、「目的のためには手段を選ばず」的なところがあり、チームの中でも浮いた存在になっていますが、全く空気が読めません。読もうとする気すらありません。
組織内の忖度を無視して、暗号解読のための高額な計算機を手に入れ、嬉々として暗号解読に当たります。エニグマは毎日コードが変更されますから、毎日、出題される難解な問題をその日のうちに解読するという技術の確立がチームのミッションです。数学オタクのチューリングにとっては、まさに対戦型の戦争ゲームで勝ち負けを競っているようなノリです。しかも、解読したことをドイツ軍に悟られないように、統計学的にわずかに勝るように戦略的に解読情報を利用して最終的に英国を勝利へ導きます。そこには数学者や統計学者の冷静・冷徹な視点があります。専門家は短期的な視点からは、一見、周囲から異質な存在に見られ、また、反社会的な決断をしているように見えても、実は長期的な最善策を呈示することができるのだと思います。
エニグマ解読チームの存在はあらゆる記録から抹消され、終戦後は孤独だったようです。大学で研究を続けていたようですが、変人として扱われ、同性愛問題が格好のネタにされ、居場所を失っていったとのこと。
彼の作った装置が現在のコンピュータの基礎となったと記して映画は終わります。そのコンピュータに彼はクリストファーと名付けていました。
さまざまな人の多様性が発揮され、英国を救ったエピソードでもあり、同時に、当時は多様性が認められなかった時代でもあったのだと思います。