ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える 西田 宗千佳 (著) 講談社現代新書– 2015/10/16
最近、ネットフリックスという社名をところどころで見聞きするようになっていたので、分かり易そうな入門新書を読んでみました。
面白い、実に面白い。
われわれは医療関連の研究論文をもとに日々の診療の指針(ガイドラインなど)を調整していますが、その基本は統計学に基づいたエビデンスです。かつて、EBM概念の説明を受けた際には、個々人の目の前の経験は前向き比較試験などで得られたエビデンスと比較すると、バイアスが大きく信頼性が低いとされてきました。しかし、ネットフリックスの時代では「いままでの統計学」自体も「旧式」とされてしまうのかもしれません。目の前の経験をエビデンスとして集約できる時代が目前(あるいは既に一部では実現)に迫っているように実感させられました。
詳細なタグ付けにより、目の前の事象がビッグデータの一つとして活用される・そのタグ付けさえも人の手を借りることなく行ってしまう。AIの概念を考える好例と思います。キュレーション対AI。どちらも手の内(作為)が意識されないような専門的な上位性・信頼性が維持できるかどうかにかかっているように思います。
①デジタルコンテンツの配信方法
2008年 ネットVODを快適に視聴できる環境はなかった
専用端末の制作・家庭用ゲーム機・マルチデバイス・適応型ストリーミング
②簡易な課金手段
料金 ケーブルテレビ 数十ドル/月 Amazonプライム 500円程度/月
日本の変化 ディスク販売 dTV レンタルビデオ Hulu TSUTAYA
・日本型動画配信を拓いたNTTドコモとエイベックス「dTV」。
・日本テレビ傘下「Hulu」のコンテンツ戦略。
・ネット配信を迎え撃つディスクの巨人「アマゾン」、「TSUTAYA」。
・民放キー局の「見逃し配信」サービス。
見逃し配信 テレビのイッキ見 機器と時間から解放
地方局とCM収入
③コンテンツ所有欲低下
コンシューマコントロール 見る側が見る機会をコントロールできる
ストリーミングミュージック:所有しない 聞くための権利を手に入れる
日常、必要とされる行為のほとんどがスマホで可能となった
アクセスする方法をふやせばもっと利用する
高く買ってくれるファンから順次提供する
コンテンツの反復利用性 ライブラリの会員権とみなせる
④オリジナルコンテンツ
⑤科学的なレコメンド技術
「レコメンド機能」:「ネットフリックス」の世界有数のデータ解析力。
コンテンツをいかに見つけるか 高精度のレコメンドには膨大なデータが必要
不完全なレコメンドはイラつかせる
大量なデータを収集し、比較と解析を繰り返す
ネットフリックスが用いる作品分類種別は8万 表に出ることはない
背景で集計し、「機械が作品を理解するための情報」
「視聴情報」「行動」が分析に用いられる
行動履歴をもとにした修正の検討:比較試験 A-Bテストを行う webでは日常的に実証テストを行っている
apple music:キュレーションを行う
少ないサンプルによる統計的手法に頼らない
全員を把握できる 全数調査が可能(同時に個別対応も可能)
作品制作においてもリサーチコストを格段に下げることができる
この本を読んでから、遅ればせながら、docomoが期間限定で宣伝しているアマゾンプライムのサービスを試してみました。実際のところ、予想以上に面白く、楽しんでいます。WOWOWドラマのイッキ見には完全にはまりました。追加料金なしで視聴できる作品数には物足りなさも感じますが、検索の仕方によっては、いろいろな作品が引っかかってくることがわかりました。とりあえず充分です。自宅にレンタルビデオ屋ができたような印象です。自宅のDVDやハードディスク内に録画した映画を探すよりも簡単に検索できることは間違いありません。
プライムリーディングというサービスではコンビニに並んでいるような雑誌を何種類か読むことができて、これも面白いサービスです。
「ネットフリックスの時代」は、最新の技術あるいはTV放送やコンテンツの販売ルートなど多岐にわたる内容をテーマとしていますが、分かり易く、また、私たちの生活の様々な行動と直結する具体的記述が多く、たいへん面白く読むことができました。
5Gの時代には、さらにさまざまな領域へ波及する内容と思います。
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