ニック・オブ・タイム(1996年5月18日公開)。娘の命と引き換えに、90分という制限時間内に暗殺を強要された会計士の男のお話。監督ジョン・バダム。出演チャールズ・S・ダットン, ピーター・ストラウス, ジョニー・デップ, グロリア・ルーベン, クリストファー・ウォーケン。
クリストファー・ウォーケンというとデッドゾーンを連想します。アメリカ映画はこういう演説中の要人暗殺という題材が好きですね。ごく普通に使われます。わが国ではこのシチュエーションに実感はありませんでしたが、今回の安部元総理の暗殺事件があったばかりですので興味深く観ました。
題名のニック・オブ・タイムという言葉は、ギリギリ間に合って、間一髪(のところ)で、際どい時に、いよいよという時に、危うい[すんでの・あわやという]ところでという意味だそうです。しかし、90分というタイムリミットの必然性が弱く、あまり時間のドキドキ感がありません。さまざまな時計のクローズアップで制限時間の1時30分が刻一刻と迫ってくる描写はたくさん出てくるのですが、すべての時計がシンクロして一緒に動くのは不自然、というよりも主人公の幻想でしょう。タイムリミットサスペンスは犯人が異常に時間に正確であることが前提です。時計が正確であることも前提です。被害者や追跡者の時計も正確であることが前提です。そう考えると正確な時間を守る犯人の必然性はどうしても薄れてきます。そもそも交通機関の発車時間など日本ほど時間の正確な国はないと聞いたことがあります。ジョン・バダム監督お得意のそつのないサスペンス映画ですが、周囲の殺人プロ集団vsど素人の男のストーリーはピンクパンサーのようなコメディタッチのほうがしっくりしたようにも思います。