2024年11月4日月曜日

5分後の世界

北海道への移動中に読んでいた文庫は村上龍の5分後の世界。
氏の小説は米軍基地とドラッグのイメージが連綿とつながっている。限りなく透明に近いブルーやコインロッカーベイビーズと繋がっている。ワカマツや小田桐はハシとキクのように感じた。この作家は眼の前で見聞きしたことを記録するように、本当のように断定的に書くのがうまいと思う。小野田寛郎さんや怪奇大作戦のエピソードを連想した。
舞台を構築し、登場人物を動かすという創作のプロセスはサイバー空間の対戦ゲームの様相である。兵士たちは生粋の日本兵士であり、また、半島をいでよに登場する兵士たちのようでもある。
冒頭に執拗に描かれるゲリラ戦の描写は地獄の黙示録だ。氏の小説はまるでアクション映画のようだ。ストーリーの枠組みは地獄の黙示録だろう。異常な世界へ迷い込んだ民間人が小グループで地獄めぐりをするストーリーである。ラストも地獄の黙示録。アンダーグランドの兵隊と小田桐の関係は、太陽を盗んだ男の山下と城戸誠のようだ。たくさんの映画的コラージュのようでもある。
北海道で訪れた函館五稜郭では、土方歳三のゲリラ戦の転戦はゲバラのようだったのかと連想した。氏の小説では、エクスタシーはセックスや暴力の中にあると、繰り返し描いている。
さて、コロナの騒ぎが一区切りついたようなので、ヒュウガウイルスを読んでみよう。ヒュウガウイルスはミクロの決死圏やニューヨーク1997のようだ。

日本暴行暗黒史 異常者の血

昭和 大正 明治 幕末と黒い血が長州藩まで遡る。怒りに満ちた映画です。低予算で作られた荒々しいタッチが逆に普遍性を醸し出して古びれない。一般映画やTVではお目にかかれない役者たちのため、かえってリアルです。
日本暴行暗黒史 異常者の血 ウィキペディアより
【映画監督若松孝二(1936年4月1日 - 2012年10月17日)  宮城県遠田郡涌谷町出身
「俺が死んでも映画は残る。映画に時効はない。」(若松孝二)
「『日本暴行暗黒史 異常者の血』は『黒い血』というのがもとの題だったんだけど、天皇制みたいなものっていうか、その血を絶たなきゃダメというもの、足立正生が緻密に図式をキチンと書いてくれたシナリオで足立の脚本では最高のものでしたね。江戸時代、明治、現代までの話になっていて、一人の同じ役者にそれを演じさせた。当たったんだよ。」(若松孝二談)
【脚本】足立正生(出口出名義)。日本赤軍に合流し、国際指名手配された経験を持つ異端の映画作家。
【キャスト】野上正義、山尾啓子、山本昌平、山谷初男、久保新二
【ストーリー】
東京。強姦事件を捜査する刑事は、犯人の男が自分と同郷であり、殺人、強姦、近親相姦・・・といった呪われた同じ血を引き継ぐ人間だと知る。
明治、大正、昭和そして現代と時代を越えて描かれる陰惨な黒い血の連鎖の物語。その源流には差別と復讐という社会構造の歪みがあった。

2024年11月2日土曜日

胸部X線写真についてのAI診断

近年のAIコンピュータ技術の進歩により、画像診断における利活用も始まっています。
先日、知人の呼吸器内科の先生から質問がありましたので、お答えした内容について簡単に記しておきたいと思います。(これは2024年秋の時点での個人的な経験の範囲での私見です。)
◯ 質問内容(原文から具体的名称を削除し、文章を短縮しています。)
最近、レントゲン画像から異常を拾い上げるAIシステムについて質問されたことがあります。異常がある部位を指摘し、精密検査の必要性をスコア化する、医師の診断補助としての役割のようです。現状では、あくまで診断補助であり、その部分を拾い上げた理由(例、浸潤影、すりガラス陰影、結節など)も明示されません。
1.肺がん検診において、このような画像診断補助システムは有用なのでしょうか、また、すでに実装されているのでしょうか?
2.臨床現場で、呼吸器以外の主訴の患者の胸部レントゲンで偶発的に異常を指摘された場合には、精査をすべきかどうか、どう判断すればよいでしょうか? AIが指摘したものを全例CTを撮るのは、やりすぎのようにも思います。たとえば、喫煙歴がある50歳以上の男性で、一度も胸部CTをとったことがなければ、胸部CTを提案してもよいと思う、というような対応でいいでしょうか?
3.過去にAIが指摘していた場所に将来、重篤な疾患が生じた場合、AI判定を優先すべきだったと指摘されるようなことが増えるのではないでしょうか? 
◯ 回答内容
1.胸部写真のAI診断については、検診医療機関で導入している施設がぽつりぽつり出てきています。私自身も一部で利用しています。
基本的な立ち位置としては、メーカーも0.5 次読影と言っているように、半人前の診断です。所見の部位を指摘してくれますが、現段階の機能では肋骨骨端や血管などの指摘が多く、逆に異常影を指摘できない場合も多いです。人間の読影とは異なる目線で拾ってくれるので、へーと思えるような微妙な所見を拾ってくれていることもあります。違う基準で拾ってくれる読影医が増えた印象です。
読影の際に常に参照できるような仕組みにする方法や、一次二次読影が終了したあとの合同判定の際に参照すると言うようなことが検討されています。検診の場での利用は、複数の人間とAIを含めた合議制として使われていると思います。
2.臨床の場合は、AIと臨床医との1対1の判断になると思いますので、非専門医の場合はAI判定に引っ張られてしまうと思います。疲れを知らずに淡々と作業するのがAIの強みだと思います。判定がブレませんので、専門医が気づかなかった所見を拾ってくれることもあります。その反面、重大な所見を拾わないことも多々あります。
AIの判定は、拾い上げの基準をあげたり、下げたりすることが機械的に可能ですので、AIの判定は腫瘍マーカーのカットオフ値のような意味合いだと考えています。そういう意味では、現在のAIの活用法としては専門医の補助診断(AI判定を加味することで専門医の判定精度を高めること)であろうと思います。
非専門医も同様にAI判定を加味して改めて胸部写真を眺めることで総合的診断精度を高めることが見込めると思います。AI判定に関して判断できない場合は専門医と相談するのがよいと思います。
3.AI判定は統計学的な頻度で線引きされますので、基準を下げれば、多くの場所を指摘するし、基準を上げれば指摘しなくなります。偽陽性を持ってAIメーカーを責めることもできないでしょうし、偽陰性を持って責めることもできないでしょう。AI判定によらず、専門医の目で所見が指摘できるかどうかが最終的なジャッジになると思います。今のところ胸部単純写真については、専門医の判定よりAI判定を優先することのほうが、臨床的に危険であろうと思います。胸部CTや脳MRAなどの、目的を絞り込んだAIにはかなり役に立つものが登場していますので、胸部写真のAIもますます進化すると思います。能力と限界を理解することで、診断精度を高めるために活用できると思います。