イエジー・スコリモフスキーの久々の映画でした。フィルモグラフィで見ると84歳でしょうか? 自主制作のような私的なみずみずしい映画でした。レンズに水滴のついたカメラ映像のような、一瞬の滴り、レンズの収差、赤い映像、光と影、など映像の遊びに満ちています。物言えぬ動物の切なさ。モンタージュの効果か? ロバの目に感情があるかのように魅せられます。人間たちのエゴとその犠牲になる多くの動物たち、その人間もまた滑稽で残酷で短命です。それぞれの生きている時間の中で、心が通じ合う関係をとても愛おしく感じます。
イエジー・スコリモフスキー 生年月日 1938年5月5日(87歳)
水の中のナイフ Nóż w wodzie (1962年) 脚本
早春 Deep End (1970年) 監督・脚本
アンナと過ごした4日間 4 Nights with Anna (2008年) 監督・脚本・製作
イレブン・ミニッツ 11 minut (2015年) 監督・脚本・製作
EO イーオー IO (2022年) 監督・脚本・製作
以下、記録としてWIKIPEDIAより引用
『EO イーオー』、イエジー・スコリモフスキ監督による2022年の映画。ロベール・ブレッソンの1966年の映画『バルタザールどこへ行く』に触発されており、ポーランドのサーカスで生まれたロバの生涯が描かれる。2022年5月に第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映され、審査員賞を『帰れない山』とタイ受賞した。第95回アカデミー賞国際長編映画賞にポーランド代表作として出品され、ノミネートされた。
ロバのEO(イーオー)はサーカスで、美しいカサンドラと組んでショーを演じていた。カサンドラはEOを可愛がり大切に世話していたが、サーカスは破産し、動物たちは全て売られてしまった。厩舎に連れて行かれたEOは荷車を引かされながら、大事に飼われている美しい馬たちを見つめる。厩舎のトロフィー棚をひっくり返したEOは観光用のロバ牧場へ売られた。ロバ牧場までEOに会いに来るカサンドラだが、彼女はすぐに帰らなければならなかった。EOはカサンドラを追って牧場を脱走する。狩猟者が発するレーザーサイトの光る夜の森のなか、撃たれて死にゆく狼を眺めたEOはその後も歩き続け、やがて町へと到着する。サッカーの観客席に紛れ込み、勝利の女神と讃えられたが、負けたチームのサポーターが祝勝会を襲撃し、EOも暴行を受けて生死の境をさまよう。施設で手当てを受けて一命を取り留めたEOは、毛皮農場で働かされる。しかし、EOはそこで小動物を手荒く扱う係員を蹴飛ばして昏倒させ、売り物の馬たちと一緒にトラックに乗せられてしまう。一昼夜も走り続けるトラックの運転手は途中で浮浪者の女性に食料を与えナンパを試みたが、直後に何者かに首を切られて絶命した。警察による現場検証のために馬とは別に草むらに繋がれるEOを、通りかかった男が連れ去っても誰も気付かない。大金持ちの豪邸に連れて行かれるEO。男はこの屋敷の女主人の義理の息子であった。庭の芝生は食べ放題だが、カサンドラ恋しさにEOは逃げ出す。放浪の末に見つけた牛の群れに付いて行くも、それは屠殺場ヘ向かう行列であり、EOも暗い建物の中に消えて行く。そして、EOの死をほのめかす、屠殺用のボルトピストルの発射音が鳴り響く。
カサンドラ:サンドラ・ドルジマルスカ
ヴィトー:ロレンツォ・ズルゾロ
マテオ:マテウシュ・コシチュキェヴィチ
伯爵夫人:イザベル・ユペール
レビュー収集サイトのRotten Tomatoesでは113件の批評に基づいて支持率は96%、平均点は8.1/10となり、「ブレッソンを大胆にアップデートし、見事な結果を残した『EO イーオー』がクレジットが流れた後もずっとあなたの心に残るロバ主体のドラマだ」とまとめられた。Metacriticでは24件の批評に基づいて加重平均値は85/100と示された。『カイエ・デュ・シネマ』の2022年のトップ10リストで4位となった。
受賞とノミネート
『EO イーオー』は第95回アカデミー賞国際長編映画賞にポーランド代表作として出品された。カンヌ国際映画祭 2022年5月28日 パルム・ドール イエジー・スコリモフスキ ノミネート 審査員賞 受賞 カンヌ・サウンドトラック賞(英語版) パヴェウ・ミキェティン(英語版) 受賞
ミスコルツ国際映画祭(英語版) 2022年9月17日 エメリック・プレスバーガー賞 『EO イーオー』 ノミネート
ハンプトンズ国際映画祭(英語版) 2022年10月15日 ゼルダ・ペンゼル声なき声への貢献賞 受賞
モントクレア映画祭(英語版) 2022年10月30日 フィクション作品賞 ノミネート
ハリウッド・ミュージック・イン・メディア賞(英語版) 2022年11月16日(英語版) インディペンデント映画作曲賞 (外国語) パヴェウ・ミキェティン ノミネート
ニューヨーク映画批評家協会 2022年12月2日 国際映画賞 『EO イーオー』 受賞
ナショナル・ボード・オブ・レビュー 2022年12月8日 トップ5外国語映画 受賞
ヨーロッパ映画賞 2022年12月10日(英語版) 監督賞 イエジー・スコリモフスキ ノミネート
作曲賞 パヴェウ・ミキェティン 受賞
ヨーロッパ・ユニバーシティ映画賞(英語版) 『EO イーオー』 受賞
ニューヨーク映画批評家オンライン 2022年12月11日 外国語映画賞 受賞
ロサンゼルス映画批評家協会 2022年12月11日 外国語映画賞 受賞 撮影賞 ミハウ・ディメク 受賞 音楽賞 パヴェウ・ミキェティン 次点
ワシントンD.C.映画批評家協会 2022年10月12日(英語版) 国際/外国語映画賞(英語版) 『EO イーオー』 ノミネート
ダラス・フォートワース映画批評家協会 2022年12月19日 外国語映画賞 5位 ラッセル・スミス賞(英語版) 受賞
全米映画批評家協会 2023年1月7日(英語版) 外国語作品賞 受賞 撮影賞(英語版) ミハウ・ディメク 受賞
トロント映画批評家協会 2023年1月8日 国際長編映画賞 『EO イーオー』 次点
サンフランシスコ・ベイエリア映画批評家協会 2023年1月9日(英語版) 国際長編映画賞 ノミネート
オースティン映画批評家協会 2023年1月10日(英語版) 国際映画賞 ノミネート
シアトル映画批評家協会(英語版) 2023年1月17日(英語版) 非英語映画賞 ノミネート
オンライン映画批評家協会 2023年1月23日(英語版) 作品賞(英語版) 10位 非英語映画賞 ノミネート
ロンドン映画批評家協会 2023年2月5日 外国語映画賞 ノミネート
国際シネフィル協会(英語版) 2023年2月12日 作品賞 6位 監督賞 イエジー・スコリモフスキ ノミネート 脚色賞 エヴァ・ピャスコフスカ、イエジー・スコリモフスキ ノミネート 撮影賞 ミハウ・ディメク ノミネート 作曲賞 パヴェウ・ミキェティン 受賞 音響賞 ラドスワフ・オチニオ、マルタ・ヴェロンスカ、スーラジ・バルディア ノミネート
セザール賞 2023年2月24日(英語版) 外国語映画賞(英語版) 『EO イーオー』 ノミネート
ゴールデン・リール賞(英語版) 2023年2月26日(英語版) 外国語映画音響編集賞 ラドスワフ・オチニオ、マルタ・ヴェロニカ・ヴェロンスカ、スーラジ・バルディア ノミネート
アカデミー賞 2023年3月12日 国際長編映画賞 『EO イーオー』 ノミネート