2015年7月23日木曜日

国際放射線影響学会

 5月25日~29日 京都国際会議場で開催されたICRR2015へ参加しました。

シンポジウムで呼吸動態CTの話題提供。

ランチョンセミナーで震災後の放射線医療の混乱と線量低減CTについて話をさせていただきました。

「東日本大震災と低線量CTの役割」
放射能汚染への対応について、国内外の多くの大学・研究所をはじめとする多数の先生方から多大なるご支援をいただいていることを感謝します。


東日本大震災の後の放射線汚染の混乱を経験した。4年を経過してもなお、放射能汚染の不安を抱えて生活を送っている住民に対して、一放射線診断医が日々行ってきたことを振り返りながら、低線量CTへの期待を述べる。。

2011年3月11日。東日本沖で巨大地震が起きた。
巨大地震による津波により沿岸部は壊滅的な被害を受けた。
大原綜合病院では、200名あまりの入院患者を近くの小学校の校庭に避難させ、余震が収まるのを待った。
その後、福島県では沿岸部の原子力発電所が被災し、原子炉が制御不能となったことが明らかとなった。
放射能汚染が拡散していたが、被災直後は住民にも医療機関にも正しい情報が伝えられなかった。
「汚染はない」「安全である」という公表が繰り返されていたが、当時、勤務していた仙台市の施設では福島県からの汚染制御に躍起になっており、汚染程度の差により差別が起こることを実感させられた。
一方で、福島市内の医療機関のほうが放射線に関する危機感は少ない印象であった。

4月に福島市に異動した。
原発から、およそ100kmはなれた福島市では外出制限や屋外での活動制限が行われていた。福島県のTVの気象情報では各地の放射線量が報告され、また、各地の風向きが報告された。公園には立ち入り禁止の表示がなされた。
福島市の多くの医療機関でfilmに点状の感光現象がみられ、汚染が広がっていることが実感させられた。

幸いにもインターネットが使えたので、まず、メールを使って地域医療機関の放射線部門の情報の共有を行った。
地元医師会とのつながりにつとめ、特に、各病院の被害状況と放射線値の測定値を共有した。
当時、当院ではサーベイメータも保有していなかったため、職員関係者のコネをたよりに、東京の大学研究室から放射線のサーベイメータを借り受け、職場の汚染を測定し、院内へ公表することから始めた。
屋外の放射線値は1時間当たり2μSv/h程度であったが、屋内ではおよそ0.2μSv/hであり、自分たち自身で測定することで自身と職員の安心に寄与できた。

放射線汚染の福島の医療への影響としては、集団検診の受診減少、小児科のCT検査数の減少などが確認できた。
総被曝量を自身で管理している検診受診者も見受けた。受診者アンケートでは、特に小児の検査を低線量で行うことを希望する回答が多かった。

2011年から当院で活用している逐次近似応用再構成AIDR3D(320列ADCTに搭載:東芝メディカルシステムス)は、胸部CTの被曝を1/2から1/4まで低減することが可能である。
当院での胸部CT・腹部CTの平均被曝線量は2011年から2015年と徐々に低下している。
また、肺癌術前検査などの特殊撮影においては、従来より精度の高い検査を低線量で行うことが可能となっている。
東芝メディカルシステムスはこの機能を、普及型CTから高機能CTまで、すべてのCT装置に標準搭載(ないし無償バージョンアップ)した。このことで、現在、国内で2000台を超える被曝低減CT装置が稼働している。
このことはわが国に付加された環境放射能汚染に対して、診断精度を落とすことなく医療被曝を低減させることで、国民総被曝量を低減させようとする前向きな積極的対応である。



原子力発電所事故は未だに終息していない。震災後も人口の流出が続いている。放射能汚染に対する危機管理不足・情報不足が住民の不安と不信の原因である。
このような状況での国民総被曝量低減への前向きな対策は、不安を抱える住民へのひとすじの光明であり、最近、新聞を騒がせている「東芝」の優れた社会貢献活動と高く評価されるべきと思う。

学会から提供された写真では、会議場庭園での舞妓さんの写真がたくさんありましたが、講演でめいっぱいでしたので、気が付きませんでした。

少なくとも講演会場では見かけませんでしたね。




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