2022年6月26日日曜日

空母いぶき

2019年製作/134分/G/日本。
かわぐちかいじのシミュレーション漫画の映画化。村上龍の「半島を出よ」の緻密な前半部分も連想しました。日本近海での中国船の出没やいまのウクライナ状況を予感していたような内容です。さまざまな武器や対戦技術がきれいなCGで描かれ、現代の戦争の一端がわかります。自衛隊の訓練された機敏な動きと指揮系統の顕密さにはとても好感が持てます。
ある年の年末、人々がクリスマスイブの準備をしている一夜の出来事です。国民がなんの不安もなく日常の喧騒に追われている、その同じ時に自衛隊員たちの決死の駆け引きで戦争勃発の危機を回避したというストーリーです。
指揮系統・命令系統が決められたとおりに遂行される自衛隊隊員たちの動き、専守防衛など様々な言葉が使われますが意味するところは個人により微妙に異なること、正義ではなく次の外交につなぐことを考える、など明確なメッセージは見ごたえがあります。
宇宙大作戦でカーク船長不在の為、ミスター・スポックとドクター・マッコイが指揮するような設定です。序列は明確であり、隊員の動きには全くの乱れや躊躇はありません。西島さんが指揮官ですが、常に冷静に、かつ迅速に指示を出していきます。将棋名人の指し手を見ているような塩梅です。
それに対して無策な政府。映画では佐藤浩市が総理大臣を演じていますが、周囲の閣僚に詰め寄られ、苦渋に満ちた表情で立ち尽くすだけ、死傷者が出ても安否を心配するでもなく、それでも最後には偉そうな能書きを垂れる設定で、「垂水」という名前で出ています。
シンゴジラの想定外で迷走する内閣との、後先は分かりませんが、少なくともこのリスクはゴジラより「想定外」ではないはずです。ゴジラでは専門家の対策本部が設置されましたが、この総理は専門家集団を招集するでもなく、官僚たちの協力もないようです。自民党政権ではないのでしょうか? 想定されたとおりに対応する姿がなく、外れくじを引いたと呪われた運命に天を仰ぐ総理がこの国の指導者です。同じような戦いがいま現実に起きていると思うと、いまさらながらにゼレンスキー大統領の行動は優れた対応だと思います。
興味深い映画なのに佐藤浩市総理が一人でこの映画を失速させています。フクシマ何たらと同じ匂いのする演技でした。

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