2020年8月5日水曜日

デトロイト

『デトロイト』(原題:Detroit)2017年米国映画。監督キャスリン・ビグロー。1967年のデトロイト暴動の最中に発生したアルジェ・モーテル事件を題材にした作品。
これは戦場だ。人種差別が当たり前に存在するという歴史的背景と、とは言っても爆発寸前までフラストレーションが高まっているという環境が端的に説明されたのちに、大小の暴力事件がぐつぐつと勃発する。多発する暴動の中で、一つのエピソードに過ぎないホテルでの警察官の暴力事件がクローズアップされていく。
きっかけは何でもよかった。理由にさえできれば、過剰なストレス発散の応酬へ連鎖する。すべてが狂っている状況の中で、警察と軍の責任回避と分裂、裁判所への失望、家族を失う悲しみ、50年たっても癒されることのない傷痕、連綿と続く分断が描かれる。
警官も黒人も、何をしでかすかわからない ような恐怖の描き方は「ハートロッカー」だ。あの状況になるだろうと思わせる。
デトロイトはミシガン州南東部にある都市である。映画を見て、『暴力脱獄』(原題:Cool Hand Luke)を連想した。暴力脱獄は、1967年製作の米国映画。ポール・ニューマン主演、スチュアート・ローゼンバーグ監督作品。フロリダの刑務所内での非人道的な囚人の扱いを描いている。1980年には、その後日談のごとき『ブルベイカー』(原題:Brubaker)が、スチュアート・ローゼンバーグ監督、ロバート・レッドフォード主演で作られた。
暴力脱獄の中で、看守と囚人との間で交わされる「意思の疎通が欠けてるぜ」(原文:What we've got here is failure to communicate)という言葉が「相手に歩み寄る姿勢がない」という断絶の表現として印象的であった。
本作デトロイトが全米公開された2017年は1967年から50年を迎える節目の年でもある。

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