2022年4月 NHK-BS
「昆虫記」で知られるファーブルゆかりの地を画家の安野光雅さんが訪ねます。ファーブルはおよそ百年前に南仏で生まれ、苦学して教師になり、そのかたわらで虫の行動の観察や研究を続け「昆虫記」を発表しました。
1988/11/18 岩波ビデオテークで同名の出版がなされているので、その当時の番組と思われます。自分の興味をとことん追求した在野の学者の幸福感を南仏のゆたかな光と穏やかな風景に感じさせられます。ファーブルの生地やその後に暮らしたコルシカ島、アヴィニョンなどを訪ねます。
前編ではファーブルの前半生と「昆虫記」の冒頭に登場するフンコロガシ、後編では後半生を暮らした南仏のセリニャンでファーブルが研究に没頭した狩人バチの生態を描きます。フンコロガシ、狩人バチ、ハチの帰巣の実験や毒グモ、サソリまで、本当に楽しそうに子どものような好奇心で研究を続けました。「なぜだろう?」「どっちが強いのだろう?」など、研究の出発点は、まるで子供のいたずらです。本当に好きだったのですね。番組では、ファーブルが作曲した昆虫たちの曲も聞くことができます。
番組制作当時のフランスと日本とで子どもたちにファーブルを知っているかと問うインタビューが挿入されます。我が国の子供や若者たちには遍く昆虫記が浸透していますが、本国フランスではほとんどの子供たちが知りません。自国では無名であることに驚きました。在野の研究者とは、そのように野に地に溶け込んでいるものなのでしょう。
ファーブルが晩年を過ごし「昆虫記」を書きあげた家は、今は博物館になっているとのことです。愛用の小さな机が在野の研究者の「誇り」を雄弁に語っているようでした。
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