2026年10月10日土曜日

『トパーズ』

『トパーズ 』(Topaz)は、 アルフレッド・ヒッチコックの監督による1969年公開のアメリカ映画。1968年から1969年にかけて製作された。原作はレオン・ユリスのベストセラー小説である。 監督 アルフレッド・ヒッチコック 脚本 サミュエル・テイラー 原作 レオン・ユリス 出演者 フレデリック・スタフォード ダニー・ロバン 音楽 モーリス・ジャール 公開 1969年12月19日 1970年6月20日 上映時間 126分 製作国 アメリカ合衆国 
東西冷戦の真っ只中、ソ連のKGB副長官の要職にある人物がアメリカへ亡命を企て、彼の証言からキューバに対しソ連がミサイルの搬入をしている事実が発覚する。キューバ危機の始まりであった。CIAは先のピッグス湾事件でキューバに対するコネをなくしていたため、フランス情報部のデヴロウ(フレデリック・スタフォード)にキューバ潜入を依頼することとなる。主人公はフランスの諜報機関に席をおく「アンドレ(フレデリック・スタフォード)」で、家族は妻「ニコール(ダニー・ロバン)」と娘「ミシェル(クロード・ジャド)」と娘の夫の「フランソワ(ミシェル・シュボール)」とニューヨークで過ごす計画だった。 なお、標題の「topaz」とは旧ソ連に通じたフランス高官をさすコードネームという。 
1962年のある日、政府の製作に批判的だったソ連の高官クセノフが、CIA(アメリカ中央情報局)のノルドストロム(ジョン・フォーサイス)の協力により妻と娘を伴いアメリカに亡命した。この情報は、ある情報組織の長であるアンドレ(フレデリック・スタフォード)にも伝わった。彼はただちに親友であるノルドストロムに会い、互いの情報を交換しあった。クセノフの話すところによると、ソ連がキューバに補給している軍需品の覚書は、国連のキューバ主席代表が所持している、とのことだった。アンドレは、妻のニコール(ダニー・ロバン)、娘のミシェル(クロード・ジャド)、その夫フランソワ(ミシェル・シュボール)を伴ってニューヨークに行き、再度ノルドストロムに会った。その時、彼から依頼された通商条約書を、アンドレは首尾よくキューバ主席代表パラ(ジョン・ヴァーノン)から写しとった。その後キューバにおもむいたアンドレは、愛人である地下運動の美人指導者ファニタ(カリン・ドール)を訪ね、仕事を依頼した。彼女は現在、パラによって身の安全を保障されている存在だったが、その仕事を承諾した。彼女の仲間から情報は次々と集まってきたが、仲間の1人がついに逮捕された。やがて帰国の途につくことになったアンドレは、危険になったファニタに亡命をすすめたが、彼女は涙をうかべそれを拒んだ。その彼女には、すぐ後にパラの拳銃をあびる運命が待っていた。そのころ機上では、彼女が詩集の表紙の裏にはりつけたミサイル基地などのフィルムをみて、アンドレが彼女への愛に胸をしめつけられていた。その後、彼とノルドストロムはクセノフから重大な情報を聞いた。それは、ソ連のためにスパイ活動をしているフランス人の組織「トパーズ」のことだった。首領は暗号名をコランバインという謎の人物で、副首領はアンリー(フィリップ・ノワレ)という男だった。この話を聞き少なからず動揺したアンドレは、仲間のジャック(ミシェル・ピコリ)らに頼み、旧友達を集め昼食会を開いてもらった。その中には、アンリーも加わっていた。しかし事件は意外な方向に進み、アンリーは殺されてしまった。そして、彼を襲った男の1人がもらした電話番号がアンドレの親友ジャックのものだった。さらにアンドレは、妻がジャックと愛し合っていたことを知った。翌日、米仏会談に出席を拒否され、ひとりセーヌの家に帰ったジャックの部屋で、1発の銃声が、鳴り響いた。自殺したのか、殺されたのか? 翌朝の新聞はキューバのソ連ミサイルが撤去されたことを、大々的に報道していた。 
1969年公開というと1967年:『007は二度死ぬ』1969年:『女王陛下の007』 の頃である 当時、007は大掛かりなセットとスマートな活劇、ボンドガールというセクシー女優でヒットしていた。 007は元はと言えばヒッチコックの海外特派員や泥棒成金、逃走迷路などの 影響を受けている。『北北西に進路を取れ』などは007シリーズの原型の一つと言われています。ライバル心:ヒッチコック自身は、流行の007に対抗して独自のスパイ映画を制作したこともあります。 トパーズや引き裂かれたカーテンは007映画へのライバル心で作られたのだろう。
トパーズの静的で淡々とした演劇的な表現はヒッチコックらしいが、007映画のような派手さやケレンがない。二重スパイやインテリジェンスについて語られる。特有のユーモラスな表現は皆無とは言わないが少ない。ただし、「007への対抗心が直接の制作動機だった」とまでは断定できません。 1960年代後半はまさにスパイ映画ブームでした。1963年『007 ロシアより愛をこめて』 1965年『サンダーボール作戦』 1967年『007は二度死ぬ』 1968年『アイス・ステーション・ゼブラ』 1969年『女王陛下の007』など。 ボンド映画は秘密基地、大規模なアクション、派手なガジェット、美しいボンドガールという娯楽路線を確立し、世界的な人気を博していました。 一方、アルフレッド・ヒッチコックは、「スパイ映画は自分の得意分野だった」という自負を持っていました。 実際に007シリーズ以前から • 海外特派員 • 逃走迷路 • 泥棒成金 • 知りすぎていた男 • 北北西に進路を取れ などで、「一般人が国際的陰謀に巻き込まれる」「諜報戦」「冷戦」という題材を何度も扱っていました。 特に『北北西に進路を取れ』は、 世界を股にかける追跡劇 • 謎の組織 • 美女とのロマンス • 列車や飛行機を使ったアクション など、後の007に通じる要素が非常に多く、「ボンド映画の祖先の一つ」と評されることが少なくありません。 
『引き裂かれたカーテン』と『トパーズ』 引き裂かれたカーテンは東西冷戦の緊張がテーマです。 しかし、この作品ではヒッチコックは派手なアクションではなく、 情報を盗むこと • 亡命 • スパイの心理 • 殺人の生々しさを重視しました。 有名なのが農家での殺人シーンで、「人を殺すのはこんなに大変なのだ」と現実的に描いています。 続くトパーズでは、その傾向がさらに強まります。 舞台はキューバ危機。 主人公は超人ではなくフランス情報機関の人物であり、 • 情報収集 • 裏切り • 二重スパイ • 政治的駆け引き が物語の中心です。 つまり「諜報活動そのもの」を描こうとしているのです。 007は 、一人の英雄が世界を救う • 敵は悪の組織 • アクションが主役 • 娯楽性重視 なのに対し、 『トパーズ』では 主人公ですら目立たない • 情報は断片的 • 誰が味方か分からない • 地味な会話が続く • スパイとは組織戦である というリアリズムに徹しています。だから観客は「盛り上がらない」と感じやすい反面、実際のインテリジェンスの世界には近いと言えます。 
『トパーズ』は大きなアクションより、 部屋への出入り • 視線 • 会話 • 沈黙 • 人物配置 で緊張感を作っています。 これは舞台劇にも通じる演出で、初期から一貫したヒッチコックの美学です。 一方で、 『北北西に進路を取れ』のような遊び心や、 『泥棒成金』の軽妙さ、 『裏窓』のユーモア はかなり抑えられています。 そのため『トパーズ』はヒッチコック作品の中でも最もシリアスで、ユーモアの少ない作品の一つと言われています。 なぜ地味に見えるのか 1969年という時代に観客は『007』のスケール感に慣れていました。その中で『トパーズ』は、あえて情報戦や心理戦を主軸に据えたため、娯楽映画としては地味に映りました。 逆に現在見ると、「スパイとは銃撃戦ではなく情報を扱う仕事である」という視点は、後の裏切りのサーカスのようなリアリスティックなスパイ映画に通じる先見性があったとも評価できます。 つまり『トパーズ』は、007に対抗してスパイ映画を撮ったという側面は確かにあるものの、ヒッチコックは007を真似するのではなく、「本来、自分が考えるスパイ映画とはこういうものだ」という答えを提示した作品だった、と考えるのが最も近い評価でしょう。

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