雑誌 RadFan の依頼記事で仕事のTIPSについて書きました。人さまにご披露するようなことはないのですが、ひやかしで回ってきた記事だと思います。
以前から(それこそ、岩波新書の知的生産の技術は高校生の時だったと思います)、知的生産本は読み漁っていましたので、この機会にざっと思い返してみました。
梅棹忠夫がこの概念の原点でしょう。データを定型的に整理しておけば、効率的生産につながる。
山根一真はデータの定型化をいかに負担なくおこなうかのノウハウを提案。
立花 隆は氏の膨大な著作をいかにスピーディにまとめていくかとういノウハウの神髄として、アウトプットを見据えてインプットするという、プロの物書きからすれば当たり前の技術を素人に披露。
野口悠紀雄は手間のかかる検索を時間軸あるいはコンピュータに任せることで、インプットにかかる労力も大きく削減できることを。
勝間和代や小山竜介など最近の多くのHACK本は文房具など道具にこだわり、いかにスキマの時間を有効活用するか、いかにモチベーションを高めるかという点を強調しています。
医師としての環境からか、もっとも共感して読んだのは、坪田一男の理系のための研究生活ガイドです。今でも読みたくなると買ってきますので、何冊かあるはずです。初版が出たのが1997年9月と書いてありますので、おそらくこの年の秋に読んでいます。京都の学会からの帰りに駅の書店で暇つぶしのつもりで買って、帰りの新幹線であっという間に読んだことを覚えています。
金がない・時間がない・設備もない、だけど楽しいからやるんだ。という明快なメッセージが一貫していて、この本自体がモチベーションを喚起してくれます。気に入っているフレーズは以下の通り。
日々の業務を通してリテラシー能力を高める。
我以外、みな師。
何がほしいのかを明確に意識する。
仲間を作る。
パソコン(ワープロ・データベース・コミュニケーションツール)の活用。
プロジェクトファイルを作り、全体の進捗を概観できるようにする。
公表の機会を作る。
clinical dutyは何割か? スキマの時間はあるか?
研究費を集めると決意する。
自分の業績に関心を持つ。業績リストを作る。
大学教授としては当然の戦略とも思えますが、氏は地域の病院勤務の時代にもこれらを実践しています。特に、 金がない・時間がない・設備もない、だけどやりたい、という件が、この本の内容の大部を占めます。
「研究」という言葉は「企画」と読み替えていただいていいと思います。お金が必要だと明確に記載しているところは、他の知的生産本にはない、目からウロコの箇所でした。プロジェクトファイルに進行中の企画の一覧を作り、全体を概観できるようにするという部分は、目標とするアウトプットが明確になり非常に効果的だと実感しています。
今、病院収入のほとんどは医事課からの診療報酬です。当然ですが。しかし、多くの病院で経営が潤沢とはいえませんので、研究教育費が制限されています。 金がない・時間がない・設備もないという坪田教授の言葉は、今の私たちの言い訳そのもののように思えてきます。もし、個々の医師が診療報酬以外のお金の獲得を意識すれば、 教育研究の自由度は大きく変わるでしょう。金ばかりでなく、人・モノでもそうです。
坪田教授の文章を読んでいるとわくわくしてきます。(敬称略)
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