『殺人の追憶』(さつじんのついおく、原題:살인의 추억)、2003年韓国映画。軍事政権下で比較的治安のよかった1980年代後半に発生し、10人の犠牲者を出した華城連続殺人事件を巡る刑事たちを描いている。第40回大鐘賞で最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞受賞。
ポン・ジュノ監督が以前から同様の作風で映画を作っていたことに、いまさらながら驚いた。公開時に観たが、今見ると印象が全く違う。「母なる証明」や「パラサイト半地下の家族」と共通のディテールを細かく描きつつ、その中に戯画化されたユーモラスな表現を加え、田舎の村で確かに存在して生活していた村民の思い出を丁寧に描いている。特に「母なる証明」と非常によく似た作りである。
一体、真実とはなんだろう。犯行現場を訪れるたくさんの人がいる。被害者、犯人、目撃者、容疑者、刑事たち。物証があげれれない事件について、もはや真実は「追憶」になってしまっている。現場に戻って「追憶」を反芻する。刑事も犯人も。捜査は「夜の大捜査線」風に進んでいくが、DNA検査をアメリカで行うことに社会的・国家的不信がかぶさってしまい、その段階で真実はもう見えなくなっている。例え真実が明らかになったとしても、「母なる証明」で描いているように、個人から国家まで、さまざまなレベルで事実を有耶無耶にしてしまうたくさんの介入があるだろう。黒澤明の「羅生門」へ遡れる類似性を感じた。
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