2020年3月11日水曜日

『イレブン・ミニッツ』

『イレブン・ミニッツ』(原題: 11 Minut, 英題: 11 Minutes)、2015年ポーランド・アイルランド合作映画。第72回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に選出。第90回キネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・テン、第8位。
御年78歳のイエジー・スコリモフスキの新作です。本邦では初公開作品の「早春」で強烈な印象を残したのち、長らくスコリモフスキー監督作品を見ることができませんでしたが、数年前の「アンナと過ごした4日間」で健在ぶりを示しました。
本作品は、ホテルのベッドでじゃれ合う夫婦のスマホ映像からスタートし、望遠と広角、クローズアップとスローモーション、俯瞰と仰角など、多くの撮影技法が散りばめられた映像の教科書的な習作です。
17時から17時11分までの11分間に起こる群像劇を、同時進行・カットバックを多用し、スピーディに描いた実験映画のような、先端的・挑戦的な作品といえそうです。複数の登場人物の複数のストーリーが同時進行しながら、一部に関連性を持たせ、収束する?あるいは連鎖する?的な思いを抱かせながら、最終的なクライマックスを迎えます。
多くの人々がそれぞれの人生を生きています。正義や悪や下心や懐疑心をそれぞれの胸に秘めながら蠢いています。出来事の表と裏、どちらが正しいとも言えません。ただ、一つの懐疑心から起こる突然の破綻、そこから始まる連鎖にブレーキを踏む余裕はありません。理解を超えたスピードで連鎖が起きます。発端はどれでもよかったのだと思わせます。
人々のかけがえのない人生を飲み込んだ黒煙がテレビモニターの液晶の一つのドット抜けに過ぎないことが明らかになるラストシーン、ホテルの11階、1111号室など11へのこだわりなど、監督の意図は明確です。

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