FDG-PETを用いたがん検診は一般にPET検診と呼ばれています。FDGという放射性薬剤を注射したのちにPETという検査機器で撮影をする方法です。FDGとは、18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)の略称です。ブドウ糖のニセ薬で放射線の標識を加えたものです。
一般的にがんや炎症部位は細胞の活性が高まっており、ブドウ糖をたくさん消費します。FDGを注射すると糖を欲しがる細胞に取り込まれるため、PET装置で全身を撮影し、FDGの集積部位をさがすのです。
FDGを少量静脈注射し、1時間から2時間ほど安静に過ごしていただいた後、検査室に移動して検査を行います。検査時間は約30分間から1時間です。頭部から骨盤膣まで3次元的に撮影し、同時に撮影したCTあるいはMRIと重ね合わせて解剖学的位置を同定します。
検査に使う18F-FDGによる放射能被曝は極微量であり、CT検査1回の10分の1程度ですが、体内に留まっているため、注意していただく内容がありますので、お渡しする説明書をお読みください。
PETを用いたがん検診には、解剖学的位置の同定をCTで行うか、MRIで行うかで、PET-CT検診とPET-MR検診とがあります。PET-CTは広く普及した検査法であり、がん検診の一手法として確立した方法です。一方、PET-MRIは2011年、国内で初めて福島県立医科大学に導入されました。福島医大から多くの知見が得られており、福島県はPET-MRIの先進県と言ってもいいでしょう。
CTの利点は肺や骨がよくわかる点です。MRIの利点は頭頚部や肝臓・骨盤内の解剖がよくわかる点です。どちらも得手不得手がありますので、どちらを選べばよいかわからない場合はご相談ください。
よくある質問
Q どのような人にすすめられますか?
A がん年齢に達した方(50歳以上)で、通常の人間ドックで発見困難ながんが心配な方、ご高齢などの理由で一つの検査で体内のたくさんの臓器を調べてほしい方、通常の検診を定期的に受けていてさらに節目などで精密な検査をお受けになりたい方などにお勧めいたします。
Q PET検査はがんと正常とが鑑別できるのですか?
A 糖代謝が亢進している部分に集積するため、おとなしいがんでは集積しない場合があります。また、反対に炎症に集積する場合があります。検査前に筋肉を動かした部分や脂肪組織などにも集積します。従ってPET検査だけで、がんと正常とを鑑別できないことがあります。
Q PET検査ですべてのがんを発見できますか?
A 全てのがんを発見できるわけではありません。PET検査でなければ発見できないがんもありますが、他の検査(内視鏡検査や細胞診等)で発見できて、PET検査で発見できないがんもあります。PET検査が苦手な場所や1cm未満といった微小ながんは発見できない場合があります。しかし、1つの検査で多くの臓器を検査できるのがPET検査の最大のメリットです。
Q どうすれば全てのがんを発見できますか?
A どんな検査をどれだけ受けても、全てのがんを100%発見することはできません。どんな検査でも発見できるがんの最小の大きさが決まっていますので、小さながんの発見には限界があります。また、定期的に受けている検査の間の期間に発生してくる病気もあります。
しかし、複数の検査を組み合わせて検査計画を立てることによって、がんを小さな段階で発見できるように工夫することが可能であり、PET検査はその大きな手助けになります。全てのがんの診断に有効な一般の人間ドック検査を行った上で、さらなる精査としてPET検査をお受けいただくのが、最も安心を得られる組み合わせです。
Q PET検査を受ければ、他の検診は受ける必要がありませんか?
万能の画像診断ではありません。それぞれのがん検診を定期的にお受けになった上で、全く別の原理で受けていただく検査だとお考え下さい。通常の画像診断(X線やCTやMRI、超音波検査など)は腫瘍の「かたちや大きさ」を見る検査です。これに対してPET検査は細胞の「活動性」から異常を拾い上げる検査です。がん検診は魚とりの網です。通常の網の目からすり抜けた病気をPETという別の網ですくうと考えてください。PET検査にも網の目があります。
Q がん治療中ですが、PET検査を受けられますか?
A 病気の種類や病状の情報がないと正しい検査結果が出せませんので、検診ではなく、担当の医師に相談してください。診療でPET検査をお受けになるのが良いと思います。
Q PETの安全性は?
A
PETで使用される薬剤はブドウ糖の一種であり、副作用の報告はありません。また、投与量も少なく、半減期も非常に短い(半減期110分)ため、被曝は人体にほとんど影響のない量です。ただし、いくつかの生活上の注意点がありますので、お渡しする注意書きをお読みください。
Q PET-CTとPET-MRのどちらがいいですか?
A FDGを用いて異常な細胞活性部位を探す原理は同一です。集積部位の解剖学的位置を確認するための検査法にCTを用いるか、MRIを用いるかの違いです。MRIには、閉所恐怖や体内金属・刺青などの検査ができない場合があります。また、CTと比較して、体格による制限があります。PET-MRIは肺が不得手ですので、肺がんCT検査は別に行っていただくことをお勧めします。PET-CTは 脳が不得手です。頚部や肝臓・骨盤内の解剖学的位置はMRIがよくわかります。
Q PET-MRを受ければ、脳MRIやMRCPの代わりになりますか?
A PET-MRのMRI撮影は解剖構造の確認を目的としていますので、それぞれの部位の病気をさがす撮影方法とは異なります。脳や肝臓のMRIについては、 それぞれの検査を追加でお受けください。
Q 検査は苦しいですか?
A 静脈注射をした後、薬剤が全身に分布するまで1時間ほど安静にして待ちます。その後はポジトロンカメラのベッドに仰向けに寝ていただきます。PET-CTではCTとPETを合わせた装置で、機械が中で回転する音します。PET-MRではMRIとPETを合わせた装置で撮影します。通常のMRIと同様に体の上に装置の一部をかぶせたり、筒形の装置内に入っていただきます。閉所恐怖の方はお受けできません。体内に金属のある方もお受けできません。機械からドンドンといった工事現場のような大きな音がします。30分から1時間程度で撮影は終了します。撮影の間は動かないようにしていただきます。その後、別室で退出時間まで休んでいただきます。注射から検査終了まで2時間から3時間程度かかります。
Q 検査前日や当日の食事・飲み物の制限はありますか?
A がん細胞がおなかを減らした状態でないとFDGが取り込まれません。つまり、体内の糖分が高い状態では検査ができません。
【お飲物】 当日のみ制限があります。ただし、糖分含まないお飲物(水・お茶・白湯)はご自由にお取りいただけます。
【検査時間が午前の場合】 検査当日の朝食はお召し上がらないでください。検査前日の夕食は普通通りお召し上がり下さい。
【検査時間が午後の場合】 検査当日のお食事は検査時間の5時間前までに軽く(通常の半分程度)済ませてください。昼食は召し上がらないでください。
Q 糖尿病ですが、検査を受けられますか?
A 血糖が高いと検査できません。当日の血糖が安定している必要があります。検査当日の血糖値が高い場合は検査を中止することがあります。検査が行えても、正しい検査結果にならない場合がありますので、糖尿病の方は主治医の先生と相談してください。
Q 当日の内服薬は飲んで良いですか?
A 心臓病や高血圧等の内服薬は通常通り服用してください。